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女刑事‐石宮叶那
【OL/お姉さん 官能小説】

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女刑事‐石宮叶那1-2

被害者の身元が割れた。
志村隆…三十六歳。
最近になって勢力を拡大している暴力組織:興亜会の末端の構成員だった。
死因は胸部への銃撃。
三発撃ち込まれていた。
そして県警が色めき立ったのが志村隆の遺留品に含まれたおよそ5グラムの覚醒剤だった。
覚醒剤の取引を巡るトラブル。
それがこの事件に対しての県警の見方であった。
港南署に捜査本部が設置されその指揮には県警捜査一課の室田警部が任命された。
叶那と信吾は一時的とは言え室田警部の配下になった。

素行の極めて悪い興亜会を心底憎んでいた叶那はこれを機に興亜会自体を潰す事を室田警部に進言したが。
思いつきとも取れるその進言はあえなく却下された。
“おまえらは黙って聞き込みしていろ!”高圧的とも取れる室田警部の言葉だった。

「…ったく!室田の野郎!」
叶那は覆面パトカーのステアリングを握りながら毒づいている。
とばっちりを食いたくない信吾はカメの様に首を竦めている。
「せっかく興亜会をぶっ潰すチャンスだって言うのに!なぁ真崎」
「そ…そうですね」
信吾は話を振られて相槌を打つしか手はなかった。
今の叶那の様子だと反対なんてしたら本当に撃たれかねない勢いだった。
「し…しかし何で先輩はそんな興亜会にこだわるんですか?」
これは信吾が前々から叶那に対して疑問に思っている事であった。

二人の間に沈黙が流れた。
“マズったかなぁ…”信吾は恐る恐る叶那の方を見た。
叶那は目を細めて前の方を見ているが怒っている感じはない。
ただ…その静けさがかえって信吾には重く圧し掛かってきた。
「聞いちゃ…マズかったですかね…」
ある意味、この質問も間抜けと言えば間抜けだった。
聞いたらマズいと本気で思ったらその話題にそれ以上触れないのが大人だ。
ただ今の叶那にはそんな信吾の幼い軽薄さが妙に可愛く感じられた。
「私は刑事になったばかりの頃な…」
叶那がポツリポツリと話し出した。

叶那が刑事になり立ての頃。
叶那は一人のベテラン刑事と組んでいた。
“岩さん”父親くらい歳の離れたベテラン刑事はまだ弱々しい女の子の叶那に時には厳しく、時には優しく刑事のなんたるかを教えてくれた。
そしてこの老刑事…暴力団に対して並々ならぬ敵意を抱いていた。
家族を…。
妻と子供の命を暴力団によって奪われていたのだ。

そしてある事件を捜査している時に興亜会の前身の山城組の組織犯罪の証拠にぶち当たった。
警察は徹底的に山城組を追い込んだ。
だが追い詰められた山城組幹部は自棄を起こし叶那を拉致した。
叶那があわや輪姦されそうになった時…助けに現れたの岩さんだった。
岩さんは数発の銃弾を浴びながら山城組の幹部連中を射殺した。
岩さんも殉職した。

そしてそれらの事件に関与していないとされた連中が新たに立ち上げたのが興亜会であった。

あまりの壮絶な昔話に信吾は言葉を失っていた。
淡々と語り終えた叶那はじっと前方を見据えている。
叶那の瞳から涙が一筋流れ落ちた。
その涙を見た瞬間…信吾はこれ以上ないと言うくらい生まれて初めて本気で人を好きになっていた。


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