妹を睡眠薬で眠らせた-5
「…いやだ。私、寝ちゃったの?」
起き上がりながら言う「ごめんね、お兄ぃ。…毛布までかけてもらって」。
「い、いや。いいんだ。…もう目は覚めたのか」
後ろめたさで一杯の俺は、口ごもりながら応えた。
…どうやら妹は何も気付いていない。ほっと胸を撫で下ろす。
「もうこんな時間、私、帰らなくちゃ…」
「そ、そうか。…もっとゆっくりしていっていいんだぞ」
妹はそそくさと帰り支度をし、「じゃあまたね、お兄ちゃん」と言って帰っていった。
俺は、罪の意識に囚われながらも、満足感と幸福感の中にいた。
とうとう真知子と本物のセックスをした。実の兄の精液を妹の性器の中に流し込んだのだ。
どれほど長い間待ち焦がれたか。いつしか空想ではなく妄想の世界になっていた。もはや現実の世で真知子と俺が結ばれることはないだろうと思っていたのだ。
眠っている妹を犯すのは本意ではなかったが、仕方がない。こうするしか欲望を満たす方法はなかったのだ。
…とりとめなく思い返していると、携帯に電話がかかってきた。
帰ったばかりの真知子からだった。
「はい。…どうした? 忘れ物か?」
「うぅん、違うの」
…間があった。
「…お兄ちゃん。私、さっき何があったか知っているの。…お兄ぃが私にしたこと、分かってるの」
心臓がどきんと跳ね上がり、言葉も失った。
「面と向かっては言えなかったし、このまま知らないふりをしようかとも思ったけど。…やっぱり、お兄ちゃんに伝えたくて電話しちゃった」
「あ……」
何も言えず、小さな声で「ごめん」というしかなかった。
「あの…最初に聞くけど、もしも赤ちゃんができていたら、お兄ぃ、どうする?」
「うっ。すっ、すまん。…もちろん、何でもする。ちゃんと責任はとるよ。…信じてはもらえないと思うけど、そうなったら隠さずお前に言うつもりだったんだ」
「お兄ぃ、勘違いしているといけないから先に言うけど、私、怒ってないよ。…確かに眠っているうちにされたのはちょっとだけ嫌だけど、お兄ちゃんとこうなったのはいいの。…うぅん、いいとかじゃなくて、本当は嬉しいの。私、いつかこうなりたいと思っていたから」
思いがけない言葉に、俺は聞き違いではないかと思った。
真知子は続けた。
「主人が死んだからじゃないよ。ずっと昔からお兄ぃに抱かれたいと思ってた。…もう彼はいないし、もちろん、寂しさも多少あるかも知れないけど、私は自由になったという気持ちの方が強いの。…もう私は何をしてもいいんだ。…だから、実家に行くのはお兄ぃに会いたかったからなの。…でも、そんなこと、私からはなかなか言い出せないし…」
聞き間違いではない。妹も私と同じ想いを抱いていた。
何ということだ。それなら睡眠薬など必要なかったのだ。
…そう思いつつも、うろたえたまま俺は妹に聞く。
「まっ、真知、…お前はいつから気がついていたんだ。…その、俺がお前に…さっき、その…」
「最初は夢だと思ったの。…でも、相手はお兄ちゃんだとわかっていて、気持ちよくて…。そのうち、私を呼ぶ声が聞こえた。あっこれは現実なんだ…って分かったのは、たぶん、お兄ぃが私の中で終わろうとしていたときだと思う。お兄ぃの熱いものが私の中の奥の方に出されているのを感じたもの。なぜか、そのとき目を開けてはいけないことだけは分かったわ。体も反応しちゃいけないって…」
俺が最初に精液を迸らせているときに、もう妹は目覚めていた…。