龍之介・六-5
「沢山入ってるよな、ここ。何ヵ月?」
「うるさぁい。触るなー、苦しいのよ」
こうしてふざけながらも、ベッドに倒れて動けない私を看病してくれている。
タオルを絞っておでこに当てて、自分じゃ脱げないコートを脱がしてくれたり・・・
よく私が酔っ払って帰るから介抱には慣れてるんだよね。
ふらふらになりながら帰っても、龍之介がいるから安心する。
・・・安心しすぎちゃうんだ。
自分で制御出来なくても、私を受けとめる相手がいる。
それは果たしていいのか悪いのか、どっちだろう。
「少し寝た方がいいんじゃないかな」
「すぐ寝たら牛になっちゃう・・・」
「多少腹が出たって変わらないよ。早く寝とけって」
「何で寝かせようとするの。襲わないでよ」
「そういう口が聞けるなら心配無いかな。俺だってたまには弟らしくもなるさ」
そう言いながら、龍之介は毛布をかけていく。
でも私だけじゃなくて自分も一緒に入っている。やっぱり襲うつもりかな・・・
「りゅ、龍くん?!」
私を抱き締めて、おでこにキスをして、そのまま私の頭を自分の胸に寄せた。
これじゃまるで胸枕みたい。
「俺も眠くて・・・あまり寝てないから」
「そうだね、誰かさんのおかげで。4時に起こすとか、休みなのに無駄に早起きね」
欠伸混じりに呟く龍之介にツッコミを入れて、胸をつねった。
・・・いつも抱かれてる時より、鼓動がゆっくり聞こえてくる。
行為の最中なら激しくなるのは仕方ないけど、普通の状態でこうするのはやけにドキドキしてしまう。
(眠そうだけど・・・襲わないかな・・・)
行為に及ぶ時は決まって龍之介からだった。
仕事から帰ってきて、テレビ見ながら寛いでる私の背後から不意討ちでしたり・・・
それでも、寝ているところを無理矢理したりはしなかった。起こされてからやられるのは毎回だけど、まだ寝てる最中にされた事は無かった。
あまり体調が良くない時も龍之介は何もせず、寧ろ気遣ってくれた。
今もこうして私に胸枕しながら添い寝している。
もっと行動が酷かった時には、私がどんな状態でもただ自分の欲望を満たす事を優先していた。
おかげで風邪が悪化した事もあったし、龍之介にうつって仲良く寝込んだ事もあったっけ。
「龍くん、起きてる?」
「なんだよ・・・」
問い掛けに少し間を置いて答えてくれた声は、微睡んでいて眠そうだった。
「私と・・・してみたい?」
以前は、自分が眠くても私が起きてさえいれば瞬く間に獣になった。
でも、お互いの温かさを感じられる距離にいるのに大人しいから、質問の答えを想像するのは難しくはない。