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聖夜
【その他 官能小説】

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聖夜(その1)-4

 統合失調症…


病気とは思いたくなかったが、明らかに麗子は病気だった。そして、彼女にはもうひとつの病気
もあったのだ。癌だった…。卵巣近くにあった癌の摘出手術も一度受けている。

妻はそのショックから精神的な病気を発したとも言えるが、もっと別の原因にすべてがあったの
だった。K…氏は、そのことを知ることもなかった。そんな妻の隠された気持ちを優しく慰め、
抱いてやることさえ自分ができなかったことを、今さらながらK…氏は後悔するしかなかった。


あれは結婚式の一週間前だった…。

サナトリウムの近くのこのホテルで、K…氏と麗子は静かな夏の休暇のひとときをすごしたこと
があった。それが麗子の希望だったことを今さらながら思い出す。

あのときと同じように麗子と泊まった部屋の窓を開け、磨ぎ澄ましたような外の冷たい空気にふ
れる。麗子と初めてこの部屋で一夜を過ごした時間が、昨日のことのように肌に甦る。
しかし、K…氏にとっては、ふたりが充ち足りたというには、あまりに遠くかけ離れたものを、
あのとき感じたことを思い出す。


あのとき…

麗子の艶やかな黒髪はあのころ長く肩にかかり、微かに月灯りに照らされた青白い顔は、瑞々し
く優しいものを感じさせた。均整のとれた妻の体の美しい線は、月の灯りの中で眩暈のするくら
い妖艶さを漂わせていたものだった。

ゆったりとした弛みのある乳房の翳りが情感を湛え、象牙色に冴えわたる麗子の熟れた肌が、
白い下着のベールに包まれ、ベッド一面に広がっていた。

彼はゆっくりと彼女の下着を剥いでいった。ベッドの上に麗子の全裸の白い姿態が拡がった。
でも麗子はじっと窓の方を見つめていた。
黒髪がシーツの上に藻のように模様を描いていた。形のいい乳房がすそ野を広げながらも、ゆる
やかな膨らみを保っていた。翳りのあるみぞおちから括れた腰、そして優しさをゆったりとふく
んだ下腹部が美しい線を描いていた。

K…氏は、麗子の体を貪るように求めた。でも麗子の瞳はどこか醒めきったようにK…氏に注が
れ、醒めきったままその行為を受け入れようとしているかのようだった。

K…氏は麗子の香しく匂いたつ肌を愛撫した。肌の柔らかさ、肌の匂い、肌の潤い、それらのす
べてにK…氏はときめきを感じたかった。若い頃のように気の遠くなるような濃厚な性を麗子と
交わしたかった。

でも、挿入したことに麗子は気がついたのだろうか…。

陰唇の縁を突いたK…氏のペニスがぬるりと麗子の中に入ったとき、彼は麗子の中に何か渇いた
ものを感じていた。麗子の中が濡れているのに、何かが渇いていた。深い性愛が、なぜかつかみ
どころのない麗子の体の中に陽炎のように消えていく。


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