〈蠢く瞳・其の三〉-14
『そろそろお尻を洗いましょうか?こんな汚いお尻では、遊ぶ気にもなりませんし』
『これだけ汚れてるなら、バスルームで洗いますか』
有海「ほが!?も……ぉああ!!!」
有海を抱えたまま、男達はゾロゾロと部屋を後にし、ドアが閉まると有海の悲鳴は静かに消えた。
それでもまだ部屋の中には数人の男達と、カメラを持った男がいる。
拘束具を付けられ、絶対に逃げられないというのに、監視の目が途切れる事はない。
完全なる監禁だ。
『ウフフ…棚瀬先輩、簡単に捕まっちゃったね?あんなに「棚瀬先輩助けて」って言ってたのにさ。可哀相にねぇ……もう誰も助けに来ないよ?…フフ……』
夏帆「……うぅ………」
男は夏帆に顔を近付け、笑いを抑えながら語りかけた。
狙い通りに夏帆を手中に納め、田尻が鍵を掛けるのを忘れたおかげで、思いがけなく有海までも捕らえる事が出来た。
テニス部の“二枚看板”を玩具として使用出来る喜びに、顔が綻ぶのも無理はない。
その人とは思えぬ狂気の感情に、夏帆は、今更ながら恐怖を覚え、顔が引き攣った。
と、突然ドアが開き、大声で笑いながら男達がなだれ込んできた。意味不明な言葉で喚く有海を抱えながら………。
『フヘヘヘ!!有海ちゃんのお尻、綺麗にしましたぞ!!』
夏帆に見せるように正面に抱えられた有海は、まるで濡れネズミのように水を滴らせ、全身がビチャビチャと濡れていた。
湯の張られた湯舟に放り込まれたのか、それとも頭からシャワーで湯を浴びせられたのか?
いずれにせよ、夏帆の股間を洗う時の態度とは違い、乱暴に扱われたのは間違いない。
ユニホームの上着やスカートに、黄土色の汚物が擦りつけるように付着しているのをみても、それは明らかだ。
有海「……ふぐ…ふ……んうぅ……」
もう怒りの炎は消え失せていた……ギョロギョロと男達を見回す視線は、明らかに怯えたものだ。
男達の一挙手一投足に過剰に反応し、顔も視線も左右に動いて落ち着かない。
夏帆(先輩……有海先輩……)
叱られた子供のように小さくなった有海の姿に、夏帆は愕然とした……今まで見てきた有海は、優しく凛々しく、どんな事があっても逃げずに立ち向かっていく強い女性だった……それが今では見る影もなく、ただただ怯えて震えている……勝てない……この男共には、自分達では勝つ事は出来ない……。
『なかなかに良い眺めですな』
濡れたユニホームに、白いスポーツブラが透けて見え、その胸元を茶色の麻縄が彩りを添える。
水分を含んだ麻縄は固く締まり、その硬度は増している。
腕も脚も、その屈辱の縄化粧は、有海の身体をこれ以上無いほどに固縛し、抗う為の一切の身動きを封じた。