昏い森−黄昏B−-4
ぽたぽたと雫が落ちる音は恐らく、森羅自身も相当な血液が流れ出ているのだろう。それとも、口元から滴る、梟の返り血だろうかー。
森羅はひたと月読を見つめると、再び襲いかかった。
今度はあやまたず、梟の喉笛に深々と牙を立てる。
月読も絶え絶えの息の中で、鋭い爪と嘴で応戦するが、如何せん体格差があり過ぎた。
「娘は貰うぞ、月読」
果たして狼のその声が、月読に届いたのだろうか。
薄れゆく意識の中、月読は大切に育ててきた娘のことを想った。
「…黄昏」
やがて、月読は霧散した。
始めから存在しなかったかのように、そこには一欠片の骨も残っていなかった。