第二話――魔人と聖人と聖女の王国-5
――魔導師の実力とその使い魔の能力は比例する、というのが通説だ。
『魔人』とまで謳われるパスクの使い魔なのだから、それだけであるはずがない。
アリスのそんな疑問を孕んだ眼差しを無視し、パンは不快感を隠そうともせずに言う。
「――お・は・よ・う」
「ええ、おはようございます」
それでも、パスクはニコリと微笑んで返した。
パンは「ふんっ」と小さく鼻を鳴らすと続ける。
「無事、国境を越えて――ペガススに入ったわよ。体調に変化は?」
「いえ。これといって……」
「……?」
アリスは首を傾げた。
――台詞自体には問題はないが……。文脈がおかしくないか?
これでは『パスクがペガススに入ると体調を崩す可能性があった』かのように聞こえるではないか。
これだけ、ペラペラと毒を吐けるのだ、まさか言い間違いなんてことはないだろうけど……。
「あ、そ。なら、良いわ――どうぞ、周囲を気にせず、イチャイチャを再開しなさいよ」
「はい。では――」
アリスが疑問符を浮かべたことを承知で、主従は会話を終結させた。
パスクはアリスの方へと視線を戻す。