第二話――魔人と聖人と聖女の王国-32
「んふっ……ちゅ、ぁ、ぷちゅ…………」
アリスはパスクのその血の気の薄い、白い唇を丹念の己の唇と下を用いて舐(ネブ)る。
口と口の間から、どちらのものだろう唾液が滴れば、ソレも舌で掬い上げ、再び口内へと混じらせた。
じゅるじゅる、と淫猥で、されど心が震えるほど心地よい水音が鼓膜を刺激する。
「んふぅ…………んっ――」
パスクを押さえつけるようにして接吻を続けるアリスはおもむろに太股に引っかかりを感じた。
硬く、それでいてどこか柔らかく、太股を押し上げるような力強さ――。
考えるまでもなく、アリスはソレがナニか把握した。
「…………げ、元気そうだな?」
「……すみません」
アリスはパスクの顔から視線を逸らし、頬を赤らめるとそう言った。
パスクも当然、自覚があったのだろう、目を伏せて答える。
若干の気まずさが二人の間に漂った。
そんな空気に耐えかね、アリスはパスクのソレに右手を這わせる。
――べ、別に大したことではない。もう、何度も……シているのだ。
恥ずかしいことはない。
うん、恥ずかしく、ない。
そう自己暗示をかけるが如く、自身に延々と言い聞かせつつ、アリスはソノ先端を人差し指と中指を用い、擦った。
「ぅ……ん…………」
パスクが一度、呻いたがすぐに奥歯を噛み締めてその声を殺したことが分かった。
アリスは心のうちでムクムクと嗜虐心が鎌首をもたげ始めたことに気付く。
――いつもはどちらかと言えば、攻められる側だ、今日くらいは良いだろう。
それに中性的な顔立ちのパスクが悶える表情は……そそる。