第二話――魔人と聖人と聖女の王国-3
「きみは熱を出していたからな。あんな体調でマトモと動けていたほうが異常だ。いまは丁度、ペガススの関を通り抜けたところだ」
「ッ!平気だったので――いいえ、この様子では平気だったようですね。良かった……」
「安心しろ。いまのきみの格好はとても魔人には見えないさ」
アリスのその言葉に、パスクは自分の纏っている服へと目を向けた。
小麦色のシャツに果実で染めたものだろう、紫色のズボンである。
「これは……?」とパスクは疑問符を浮かべた。
当然だ、彼が眠りにつくまでは紺色のローブを着ていたのだ。
――まぁ、それも血だらけでこれからも着ることのできる代物ではなかったが。
「ケネスの案でな。きみの部下たちもそれぞれ御車や女中の格好をしている」
ケネス――自称、パスクの部下である。
――いや、部下という表現は少し違うか。
それは彼の職種が密偵であることもあるし、パスクへの態度に微塵も敬意が込めらていない所為もあるだろう。
とにかく、まぁ、仲間だ――多分。
「そう、ですか……では、これもケネスが?」
「いや、それは、な……服はケネスが調達してきたものだが――」
「……服は?」
パスクは意味がわからない、と首を傾げる。
アリスは顔を真っ赤にさせた。