第二話――魔人と聖人と聖女の王国-15
「ふんっ。魔獣が……主人の身を案じて飛び出してきたか?」
「はっ!バッカじゃないのっ?私が心配してんのはアンタらよ、『聖獣八ヶ国』の木偶ボウヤ!」
「なんだ、と?」
「――ちっ。パスクゥ〜……アンタの命令を破るのはアンタのためだ、といったら私を怒らないでいてくれる?」
パンがパスクを見つめて言った。
――なにを言っているのだ?
まるで事情が分からない。
パスクの損傷と『聖獣八ヶ国』――関係性があるのか?
アリスは『魔人』と『魔獣』の主従をジッと見つめた。
未だに、ケネスに腕を取られているために自由に動けない。
そんな恋人をチラリと見つめ返したパスクは最後に自身の使い魔へと視線を戻した。
「……怒る、と言ったら止めるんですか?」
「うんにゃ……怒られるときの言い訳を考えるだけよ」
「なら……好きになさい」
「ちっ――だったら、最初からやっとけば良かった。ああ、もうっ!かなり、悩んだっつーのにぃっ!つーか、ケネス!ニヤつくなっ!その『俺は予想してたぜ』っていうドヤ顔が腹立つッ!」
「ぷっ、くくくっ……」
「笑うにゃ――――ッ!」
パンが全身の毛を逆立てて、憤慨する。
見ると、確かにケネスは必死で吹きだすのを堪えるかのように含み笑いをしていた。
しかし、それでも事情は察せない。謎は深まるばかりだ。
それはジーンも同じようで首を傾げて、目前に膝付くパスクへと訊ねた。