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とある街のとあるモノガタリ
【純愛 恋愛小説】

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雨の中-プロローグ-5

「わっ!」



 明希の身体を跨ぐように膝を立て、彼女の肩を床に押さえ付けたまま、カイキは鼻が触れるかどうかの距離まで、顔を近付ける。



「そうやって色んな男、連れ込んでるんだろ」

「…………」

「どうやって喘ぐんだよ? 見せてよ」



 そう言いながら、カイキは明希のシャツの中に手を滑りこませる。



「…………ホントに、シたいの?」



 真っ直ぐカイキを見上げると明希は臆した様子も見せずに毅然と尋ねる。その視線に当てられたのか、カイキは弄(まさぐ)る様に差し入れていた手がピタリと動きを止めた。



「……萎えた」



 手を引っ込めて、明希から離れると壁際に座り込んだ。遅れて起き上がった明希は小さく息を吐いて、カイキに目を向けた。



「ねえ、何であんなとこに居たの?」

「…………」



 今あったことを忘れたかの様にあっけらかんと訊ねる明希に不快そうに眉を寄せるカイキ。



「家出?」

「……ウルサイ」



 図星なのか、カイキは顔を背け、明希の言葉を否定した。その様子に納得した明希はニコニコ笑う。



「そっか。でも、あそこらへんはあんまり行かない方が良いよ。暴行魔もそうだし、厄介な連中が徘徊(はいかい)してるから。特に夜中はね、昼間はまあ少しは大丈夫だけど」

「…………厄介…」

「うん。あそこら辺、クスリの売人が居るって専(もっぱ)らの噂だよ。友達も見掛けたって言ってたし、警察も大分警戒してるくらいだしね」

「……クスリ」



 更に怪訝そうに表情を歪めたカイキに明希は少々不思議に思うが、それよりも念押しをすることにした。




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