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とある街のとあるモノガタリ
【純愛 恋愛小説】

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雨の中-プロローグ-3

「……あんた、何考えてんの?」



 玄関に突っ立ったままの少年は漸く口を開いた。怪訝そうに少女を見た。



「? 行くとこあるの? あるんなら帰ってくれても大丈夫だけど」

「…………」

「なら、シャワー浴びておいでよ。ホントに風邪引いちゃうよ?」



 にっこり笑いながら少女は少年を脱衣場に追いやり、コートをひっぺがした。



「服はマシみたいだね。コートはグショグショだけど。服は洗ってあげるから、脱いだらカゴの中に入れといてね」

「…………」

「ほら、入った、入った。ちゃんと着替え置いとくから」



 少女はそう言いきると、脱衣所と部屋との仕切りカーテンを閉めた。



****



 シャワーを浴び終え、出てきた青年は脱衣場に置かれていたジャージとシャツを着ていた。



「あ、サイズ合ってた? フリーサイズだから、あたしには結構大きいんだよね」



 玄関から伸びる短い廊下の先の六畳ほどの一間。窓が一つあるその部屋にこたつテーブルとシングルベッド、小さなタンス。その上に並んだ本。それが部屋の中身だった。少女の部屋にしては少々質素な感じは否めないが。

 少年は水気を帯びたクリーム色の髪を掻き上げ、少女に目をやる。



「食べる? すぐそこのコンビニで今買ってきたんだけど。パンとパスタとおにぎり」

「…………」

「それとももう食べちゃった?」

「…………」

「あ、そうだ。何か忘れてると思ったら、名前だ。あたしは篠塚明希(シノヅカアキ)。君は?」

「…………」

「うーん。黙り? じゃ、それ好きなの食べて良いよ。シャワー浴びてくるし」



 少年の側を通りすぎる明希はさっきと変わらずにこやかな表情で脱衣場に入っていった。



 警戒心無いのか?



 少年はそう思いつつも、何も言わずにこたつに座り込んだ。




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