雨の中-プロローグ-2
「くそっ!」
背後で苦虫を潰したような声が聞こえたが、振り返ることもせず少年は走り続けた。雑居ビルの建ち並ぶ中、行き着いた先は行き止まり。そこで足を止め、辺りを見回し、どうするかと思慮する。戻るべきではあるけど迫ってくり足音にその選択肢も消え始める。
ガチャン
金属音共に右側のビルの勝手口が開いた。
「こっち! 早く!」
勝手口から現れた赤茶色の髪をした少女が現れ、少年を手招きをする。他に逃げ場が無い以上、少女の招くビルへと入った。ガチャッと扉を閉めると、少女は溜め息を吐いた。
「ダメだよ。こんなとこ、こんな時間にうろうろしてたら。連続暴行魔、出てるの知らない?」
「…………」
少女は呆れたようにそう言うと、困ったように笑ってみせた。少年も女をじっと見つめた。赤茶色のショートカットに上下揃いのジージャンとジーパン。鞄を肩から斜めに掛けていて、見た目は年が変わらないんじゃないかと思った。
「ま、いっか。行こう。のんびりしてたらまた見付かっちゃう」
少年の手を握ると少女はビルの中を歩き始める。ビルを抜け、近くのアパートまで歩き、二階にある部屋の前に立つと鍵を開け中に入る。
「何してるの? 風邪引くから、中入らないと」
少年の手を引いて、玄関に押し込めると少女は部屋の中へと促した。
「シャワー浴びてくる? 寒かったでしょ」
何故余裕があるのか、少女は玄関の傍にある脱衣場を指差す。