オカシな関係2-6
「まあ、のんびり調教してあげるよ」
「誰が調教よ」
私は涼ちゃんの額をぺちんと叩いた。
調教する王子さまがどこにいる。
「それそれ。美佳ちゃんはそうでなくっちゃ」
そう言われると私が抱えていた不安はとるに足らないものに思えてきて。
「でもなあ、へーき、ってのも癪だなあ」
そういうと、また口づけられた。
「…んっ…」
くちびるを噛んで、舌が入り込む。
私は涼ちゃんを押しのけたい衝動に駆られていたけど、両手をぎゅっと握りしめてこらえていた。
涼ちゃんが好きだから。
「……」
顔を上げた涼ちゃんが苦笑する。
「まず、その、ファイティングポーズはやめよう。怖くない。怖くない。…怖くなんかないよ。…大好き。愛してる…」
暗示をかけられるように、言葉が静かに浸みてゆく。
慈しむようなキスを一言一言に。
ことほぎ。
涼ちゃんの言葉に私は解されてゆく。
コブシを包む手は温かで少しずつ力が抜けていく。
ゆっくりと開いた手のひらに涼ちゃんの指が入り込みやんわりと握った。
くちびるを啄むように触れてくる。
時折入り込む舌先が甘くとろけるように熱い。
「ん…」
「気持ちいい?」
「ん」
頷くと、涼ちゃんが嬉しそうに笑った。
「良かった。こういうのはね、ちゃあんと好きあってれば気持ちよくてもっと欲しくなるように身体ができているんだよ。だから、無理しなくても大丈夫」
またもや、暗示なのだろうか。
安心する。たぶん、そうなのだろうと思わせてくれる。
ベッドの上に座った涼ちゃんが私の髪をなてて微笑む。
涼ちゃんがベットから立ったからきいてみた。
「もう、いいの?」
「いいよ。ゆっくりでいいからさ。美佳ちゃんが物足りないってんなら、俺はいつでもウェルカムだよ?足腰立たなくしてあげる。試してみる?」
「ばか!」
マグを持って部屋を出ようとする、涼ちゃんに枕を投げつけた。
背中にぼふ。と当たって落ちた。
あはは。
大声で笑いながら部屋から姿を消した。
ほんと、アンタのそういうとこ助かる。
「大好き…」
身体を起こしながら、誰もいない部屋でつぶやいてみた。
ちょっと悔しくて、すごく嬉しい。
笑いたいんだか、泣きたいんだか分からないぐらい混乱していたけれど、それはそれでいいんだと思えた。
とても、幸せだと思った。