オカシな関係2-4
涼ちゃんがマグを2つ持って戻ってきた。
「インスタントだけどね」
と、いいながら渡してくれた。
コーヒーだった。
一口飲んでホッとする。
「ごめん。落ちついた?」
いつもの笑みを浮かべた顔で私をのぞき込む。
こくりと頷くと、
「よかった」
と、軽く息をついた。
ベッドの端に二人並んで腰を下ろし、黙ってコーヒーを飲んだ。
涼ちゃんに触りたくなる。
もたれかかりたくなる。
だけど、その先に私は行けない。
今度こそ、大丈夫。と思ったのに。
「美佳ちゃん、俺のこと好きなんだよね?」
私は頷いた。
「男として?」
それもYESだ。
「はー。よかった。そっから否定されたら……って。ま、それでも再度アタックか」
涼ちゃんは、ぼすっと背中からベッドに倒れ込んだ。
よかった?
本当に?
このまま。このままに、しておけるの?
思い出したくない。
本当に無かったことにできるなら、言うべきではない。
でも、どう?
時薬が効かない。
私の身体は未だに震える。怯える。
発作じみた感情を制御できない。
「はあー」
私はため息一つ。
プラトニックにいつまでコイツが保つのかわからない。
恋人なんて、私には無理なんだ。
それなら、とっとと切れたほうがいい。
そう思ったら少し楽になった。
そんな自分を嘲笑する。
私もマグをテーブルに置いて後ろに倒れこんだ。
「私が、会社勤めしてたって知ってる?」
「いんや」
「半年でやめたの。景気悪くてね、事務の女の子が誰かクビになっちゃうって噂になってた。1人ずつ面接して。…会議室で私、上司に犯されたの」
「え…」
涼ちゃんが頭を起こしてこちらを向いた。
でも、私は涼ちゃんを見ないようにした。
「新人は3名。1人ずつ辞めていったの。解雇じゃなくて、自主的に退職。理由は言ってなかった。だから、その理由は面接の時に初めて知った。」
話を続けたら、涼ちゃんはまた頭をベッドにつけた。
「面接は私が課長を受け入れれば、クビを免れるって話。逃げ出せないわけじゃなかった。ほかの女の子は逃げ出すように辞めちゃったんだと思う。別に課長が好きだったわけでもないわ。ただ、家が苦しいのは解ってた。圭ちゃんを大学に行かせたかったの。だから私が会社を辞める訳にはいかなかったのよ」
私は布団を握りしめていた。
あの光景が思い出される。