枯れ落ちる葉、朱に染まる紅葉-60
「いい、いやなのに、すごいきもちいい! だって、武彦だってしてるもん! あたしだけが悪いわけじゃないの。武彦だって良子先輩と、セックスしてたんだから〜〜〜!!!」
獣がごとく咆哮をすると、さつきは四肢をぴんと伸ばす。するといきなり膣圧が強くなったらしく、夏雄は不意のことに油断したのか、そのまま射精してしまう。
「うお、いきなりしまる! すげ、すげえきもちいい! さつきちゃんのマンコ、すげー名器だ! ううぐうう……!!」
さつきの中でびくびくと震える夏雄のモノ。それは久しぶりの性交のせいか、異常に長い時間、射精を続けていた……。
個室にへたりこむ二人。荒い息が整うまでしばし時間がかかる。
けだるさの残る身体を持ち上げるさつきは、夏雄を見る。彼もまた満足した様子だが、陰茎は天井を目指し、先っぽから粘液を光らせている。
「もういいですよね……、着替えても」
まだ物足りないといった様子の夏雄だが、逢瀬の機会はまだまだあると頷く。
「さつきー!!」
外からさつきを呼ぶ声がした。間違いなく武彦の声だ。それは一足遅い救いの声でしかなく、むしろいまのこの状況を見られることのほうが怖い。
「まいったな。もう起きたか……」
「ど、どうします? なんか探してるみたいですけど、あたし……」
男子トイレから出てきたところで鉢合わせとなると具合が悪い。それは二人とも同じこと。夏雄は少し考えたあと、先に外へ出る。
「俺が様子見てくるから、お前は動くなよ」
「はい……」
夏雄が何を考えているのかは不明だが、この状況をばらすようなこともないだろうと彼に任せる。
夏雄が出て行った個室でさつきはよろよろと立ち上がると、便器に腰を下ろし、卑猥に濡れる秘所をトイレットペーパーで拭った。
しばらくして夏雄が戻ってきた。バカ正直にここで待つ必要もないのだが、立つ気力がないというのが本音だ。
「さつきちゃん、お前ちょっと二階のレクリエーションルームに行ってこい」
「なんでです?」
「あそこに克也が居るんだよ」
「?」
いまひとつ目的がわからない。だが、逆らうこともできないと異を唱えることはしない。
「いいか、お前は今から克也のところへ行って、鍵を閉めて来い。二人きりの密室ってわけだ。んで……」
**――**
「失礼します」
「ん? ああ、真柴か。どうかしたのか?」
言われたとおり、さつきはレクリエーションルームへと移動した。克也は机を引っ張り出しており、紙の束に必死に赤ペンを走らせていた。
「何をしていたんです?」
そう言いながら後ろ手で鍵を閉める。もう片方は施錠済みらしく、二人だけの密室が出来上がったわけだ。
「ああ、バイト先の仕事。添削な」
「へえ、仕事熱心なんですね。でも、そんなに忙しいならなんで合宿に参加したんです?」
「ちょっと気になることがあってさ」
「気になること? それってあたしのことですか?」
先日のこと、夏雄との関係を疑ってきたのは克也。
「ああ、そうだな」
彼は特に隠すつもりがないらしく、即座に認めてきた。
「へぇ、もしかしてあたしのことを? でもだめですよ、あたしは武彦の彼女なんですから……」
さつきとしてはそれもあやふやだった。武彦とは例の一件以来、会う機会を減らしたし、メールや電話も簡素なものにしている。
はたして許せるのかといえばそれも難しく、また、今の自分の異常な状況も相談できない。