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枯れ落ちる葉、朱に染まる紅葉
【レイプ 官能小説】

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枯れ落ちる葉、朱に染まる紅葉-35

 陳腐な文章を眺めること数秒。保身に走っているそれはあつかましいの一言。だが、彼女がそれを罵ってくれるのなら、そのほうが罪の意識も軽くなるというもの。
 潜在的な保身の気持ちを気付かぬまま、武彦は返信を待った。

 そして振動音。
 まるであらかじめ用意していたのだろうか、即座の返信に武彦は驚きを隠せない。

件名;Re この前のこと
もういいよ。おわったことだし

 短いそれは咎めるとも、許すともない。
 安堵のため息が出る。
 きっと彼女は警察に届けないだろう。
 彼女が選んだのは日常なのだから。
 奇異の目でみられることを恐れたのだ。
 保身に走っているのは自分だけではない。
 武彦は妙な解釈をしつつ、携帯を閉じる。
 外では街路樹から、下卑た茶色の葉が落ちるのが見えた。
 それはまるで……。

枯れ落ちる葉、完

**−−**

朱に染まる紅葉

 真柴さつきは動揺していた。
 先ほどまで穏やかな雰囲気で開かれていた飲み会が、一変して悲鳴の飛び交う場になったからだ。
 目の前ではさつきの彼氏である三島武彦が、先輩である三谷夏雄を組み伏せ、その胸やら額やらかまわずにこぶしを振るっているのだ。
 何故こうなったのかといえば、いたって簡単だ。
 夏雄のさつきへのセクハラに我慢が出来なくなった武彦が、酔った勢いで殴りかかったのだ。
 同期生の来生智之が必至に武彦を抑え、三年の船岡克也が夏雄を庇うように立つ。
 なにごとかとやってきた店員に幹事の湯川紀一が事情を説明し、タオルを貸してくれるように頼む。
 サークルのメンバーは皆それを静かに見守っていた……。

 武彦との付き合いは去年からのことだ。
 バイトや講義の隙間を縫ってのデートは週に一度、二度あるかどうか。
 お互い初めての彼氏彼女ということもあり、どう振舞ってよいかわからず、手を繋げたら進歩したといえる程度の関係だった。
 普段の彼は気の強いさつきに引っ張られるばかりの物腰低い青年だ。だからこそ、先ほどの乱闘騒ぎは意外の一言だった。
 見直したといえばそうもいえる。もちろん褒められる行動ではないが、それでも自分のことを思ってなのだろうと考えれば、さつきにとっても嬉しいことであった。
 夏雄からのセクハラは前々から続いていたし、彼氏彼女の関係になってからは罪悪感もあった。
 まだ彼とは手ぐらいしか繋いでないというのに、夏雄は遠慮なしに肩、わき腹、腕をとり、膝をあわせて、さらにはおっぱいも触られた。
 もし彼がしなかったら、自分もいつかキレるかもしれないと、彼女は思っていた。
 夏雄は他のメンバーに諭され、それなりに反省をしている様子だった。
 武彦も憮然としているが、それでも夏雄の謝罪を受け入れたので、さつきもこのことでセクハラが止まるのならと、安堵していた。
 ――雨降って地固まるって奴かな?
 そう、安易な感覚で居たわけだ……。


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