枯れ落ちる葉、朱に染まる紅葉-34
ぬぷぽぷぶぶぶ……。
「くっ、あぁ……はぁ……」
下半身が生暖かい感覚に包まれる。初めて味わう女性の中。濡れたそれは思った以上に複雑で、でこぼこした膣壁が武彦のモノに絡むようにまとわり着く。
「ああ、いい……気持ちいいよ、さつき……あぁ……」
自分勝手に感想を漏らす武彦だが、さつきは無言を装う。けれど、低く「……ンッ」と呟くのを、彼は聞き逃さない。
「なんだ、さつきも感じてるんじゃないか……、はぁはぁ、すぐよくなるさ……な? これからも、もっと、もっと、俺達愛しあおうな……」
未練がましく伝える武彦だが、さつきは低く「くぅ……はっ……ぁ」と漏らすのみ。
初めての体験に武彦は言葉とは裏腹に、達しそうになる。なんとか気持ちを抑えようと必至に呼吸を整えるが、彼女の中に居るだけでも気持ちが昂ぶり、少しでも気を抜いたら達してしまいそうな快楽に陥る。
「あぁ、俺、もう少しがんばるから……そしたら、さつきも、すごく、よくな……るから……」
歯を食いしばる彼だが、次の瞬間……。
「ちょっと、あんたたちなにしてるの!」
窓を叩く音と誰かの声。びっくりして窓を見ると怖い顔をしたおばさんがいた。必至で隠そうとする武彦だが、バランスを崩してしまい、
「あっ……」
下半身に甘い痺れが走り、そのまま彼女の中でどくどくと射精してしまう。
しかし、最後の脳裏を掠めたのは、お土産屋の店員らしき、四十台のおばさんの顔だった……。
**――**
服を正した武彦は平謝りをして駐車場を出る。おばさんは不機嫌そうに「うちの駐車場はラブホテルじゃない」と吐き捨て、去っていった。
帰る途中、さつきはティッシュで股間を拭うと、丸めて後ろに投げ捨て、そのまま外を見ていた。
二人が合宿所に戻ると、智之と紀一が「楽しんできたか?」と尋ねてくるので、おぼろげに返事を返す。
さつきはとくに何も言わず、他の部員と談笑をしていた。
あんなことが起きたというのにも気丈に振舞う彼女を強いと思いつつ、冷静になった武彦の心には、初体験の感動よりも後悔、慙愧の念が渦巻いていた……。
**――**
ピンポーン……。ピンポーン。
チャイムが二度なったとき、武彦はテレビを消した。
息を殺して玄関に向かう。覗き窓から外を見ると、宅配業者が見えた。
「はい……」
「三島さん、お届け物です」
武彦はドアを開け、荷物を受け取る。
「ここにはんこください」
「はい……、ご苦労様です……」
荷物を受け取ると、玄関の脇に置き、そのまま居間へ戻る。
電気を消し、テレビも消したままにする。
アパートに居るとき、武彦はチャイムの音に怯えていた。
自分の行為はレイプといえるだろう。
合宿を終え、しばらく経った今も、内心どぎまぎしている。
あれからさつきとは連絡を取っていない。追試や後期の授業、バイトを理由に、サークルとも距離を置いた。
合宿の報告のほとんどは智之に任せ、事後報告を聞かされた。
その際、さつきの様子も尋ねたが、彼は「いつもと変わらないよ」とだけ答えた。
さつきがわからない。彼女はあのことをどう思っているのだろうか?
携帯を見つめ、アドレス帳で彼女の名前を探す。
発信を押せばそれで済むことなのだが、勇気が無い。
ならばメールなら?
未送信のメールがいくつかある。内容は全て謝罪に関すること。
送れば楽になれるだろうか?
何度も自問してきたが、答えが出ない。
自分の卑怯さと臆病さが嫌になるが、彼は決断が出来なかった。
そして、
件名:この前のこと
謝りたい。許してくれとは言わないけど、でもこのままでいるのは辛い。
さつき、少し話できないかな
送信ボタンを押してしまった。