第一話 ―― 魔人と魔獣と魔導騎士-9
「最後っ!騎士小隊丸々二つ――合計十八人を治療院送りにしたのは、どうっ?」
「だって、アリスさんを――」
「がぁあぁぁっ!」
「ッ!」
パンが――獅子ではなく猫なのに――吼えた。
びっくりするアリスの横ではパスクが目を点にして首を傾げている。
「アリスさん、アリスさん、アリスさんッ!アンタはソレしか言えないのかっ!?」
「はい、言えません」
即答するパスクにパンは固まったが、すぐに調子を取り戻した。
「――ひ、否定しろ、馬鹿パスクっ!捕虜の女一人のために味方へ牙を向く兵がどこにいるのよ!」
「ここにいますが……」
「そうっ!大陸中でもアンタだけ!今までは温厚で、なにを言っても大抵は平気だった中隊長がいきなり豹変して、砦の下級騎士たちはビビってるわよっ?できるだけ、この階に来ないように遠回りするくらいにね!」
「…………。な、舐められるよりは――」
「ええ、でもね……上司受けはどうかしら!?」
噛み付くように――表現方法などではなく、本当に――パンは叫び散らす。
そんな使い魔(?)にタジタジとなっていたパスクもようやく、話しが見えてきたのか、真剣な表情をパンへと向けた。
「それは、つまり――将軍が?」
「ええ、そう。デュッセルはアンタへと不審を持ち始めているわ」
「不審?」
コクリと首を上下に振るとパンは肯定した。