第一話 ―― 魔人と魔獣と魔導騎士-8
「――って感じでしょう?あと、大陸の情勢といわれましても、一介の中隊長には係わり合いのないことなので……」
パスクはリンクス王国が占領されたからこっちの情勢を要約して話した。
そんな微笑を浮かべるパスクの頭部をパンはその細長い白い尾でパシリと叩いた。
「ぃ、痛いですよ……」
「こ、こ、こここの大馬鹿者っ!ソコまで分かっていてぇ〜っ!」
パスクは悲鳴を上げるがパンは無視して、何度も尾で叩き続けた。
しかし――アリスにはとてもその攻撃が痛そうには見えない。
――あの、触り心地のよさそうな尻尾だ。どちらかといえば、気持ちよいかもしれない。
そんなアリスの心情など気付くはずもなく、パンは疲れたのか、尾を振るのを止めた。
「…………はぁ〜。パスク、アンタのここ何日かでやった所業を言ってみなさい」
「はい?所業といっても……特には――」
「こんの、馬鹿ッ!めちゃくちゃ、やってんでしょうに!まずっ、四日前のエルートス上級騎士への暴行!」
「あれは……アリスさんを馬鹿にしたので。リンクスはなんと言われてもかまいませんが、アリスさんの親衛隊を貶されて黙っているわけには……」
「ぅっ――。つ、次!グルッソ中隊長の半殺しはっ?」
「あははっ、パン。アリスさんを俺にも一晩貸せなどと妄言を吐いたクズを私が半殺しで済ませるわけがないでしょう?四分の三――いえ、もう少しギリギリ、生きてるかどうかも怪しいくらいに……というか、死んだほうがマシだと思うほど――」