第一話 ―― 魔人と魔獣と魔導騎士-6
「それで、この、ね――魔獣は?」
「ああ、彼女はパンクチュアリエーム。長ったらしいのでパンと呼んでやって下さい。関係は、まぁ、私の――使い魔?」
「なんで、疑問系なのよっ」
「だって、貴女は私に懐かないじゃないですか。他の方々の使い魔は主に忠実だというのに、嘆かわしい……」
そう言いながらも、パスクはパンの頭を撫でようと手を伸ばし、パンもパンでパスクの手を避けようとはいない。
それどころか、後ろ足を折って腰を下ろし、丁度良い高さに合わせた。
そして、その雛鳥の産毛のような白い、柔らかな毛並みの首筋を撫でられるとクルクルと喉を鳴らして喜んだ。
――懐いて……ない?
アリスは首を傾けたが、その疑問は口にはしなかった。
「……別にぃ〜、好きでアンタの使い魔になったわけじゃないしぃ〜」
「『従者の召喚』で呼ばれてしまったのだから、仕方がないでしょう?」
「はいはい……分かってますよ、色ボケご主人様ぁー」
毒を含むパンの台詞をパスクはニコニコと受け流す。
どうやら、これがこの主従の基本姿勢のようだ。
アリスはパスクの魔導師らしいところ――この部屋でしか会っていないため、最近、忘れがちであったが――を見て、小さく微笑んだ。
すると、パスクは顔を向け、アリスの微笑に微笑み返すことで応える。
そして、「それで――」とパンに訊ねた。