第一話 ―― 魔人と魔獣と魔導騎士-4
「すみません」
「ったく……いちいち、謝るな。男だろう」
「はぁ……ま、そうなんですがねェ」
パスクは情けないのか、ポリポリと頬を掻いた。
『魔人』の二つ名が見る影もない。
そんな恐縮するパスクの姿にアリスはあわてて、言い加えた。
「だ、だがなっ――そんなパスクも嫌いではない……」
語尾にいくにつれ、小声になったのも愛嬌があった。
パスクは感激したのか、瞳を輝かせるとヒシッ、とアリスを抱きしめた。
「アリスさんっ」
「〜〜っ。……っと、こらっ。どこを触って……」
パスクに抱きつかれ、アリスは幸せな気分になった。
だが、スルスルとパスクの手が胸の双曲へと移動していく。
アリスが非難の声を上げようとした、その時――、
「はぁ〜あ……乳繰り合うのも結構だけどね。もう少し、体面ってモンも考えろってのよ」
「っ?」
突然、呆れたような声色で第三者の声が闖入してきた。
高い、女性のものだ。
アリスはあわてて、シーツで己の肌を隠すと寝台から起き上がり、室内を見渡した。
先の声はかなり近くからのモノであったのだが、その発声者を見つけることはできない。
キョロキョロ、と視線を巡らすアリスを傍らにパスクは呆れた声で言う。