第一話 ―― 魔人と魔獣と魔導騎士-34
――正直、パスクには幻滅だ。
それとも、ゴルドキウスの兵は皆、こういう考えなのだろうか?
アリスが顔を蒼白にさせているとパンが呆れたように溜息を吐いた。
「はぁ……ちゃんと説明してやったっていうのに。どうやら、馬鹿はボウヤではなくてこっちみたいね」
「ほら、俺は馬鹿じゃないぞっ!パティ、謝れ!土下座だ、土下座っ!」
「ふんっ!ゲルフの分際で――」
「俺の分際ってなんだっ!そんなに俺は貶められた身分なのかっ?」
「〜〜うっさい!ガキどもがピーピー喚くなっ!」
「ぅ……」
口論を始めた二人の若い魔導師を一括するとパンはアリスを見つめた。
真剣な瞳だ。
「――アンタ、パスクが本当にそんなことをすると思ってんの?」
「ッ!だ、が――パンが現に言ったではないか!」
「はっ……私の所為にするんじゃない。パスクを信じてやれなかったアンタの――」
「所為、でもありませんよ。パン」
「っ?」
その場にいた者たちの視線が一斉に声のした木陰へと集まった。
そこには二人の人物がいた。
一人は紺色のローブをボロボロにさせ、腹部に盛大に血糊を付けたパスク。
もう一人がそんなパスクへと肩を貸している。
その人物を見たアリスはさらに驚いた。
パスクが体重を預けているのは四十前の男であり、その男にはアリスは見覚えがあったのだ。