第一話 ―― 魔人と魔獣と魔導騎士-28
「ぁ――」
「ああ、それよりも親衛隊の方々は早々に馬車へと乗り込んでください!っと、アリスさん?どうして膨れて――」
「き、きみはもう少し、女心を学ぶべきだっ」
「は、い?」
「――っ!」
アリスはとっさに口に出てしまった本心に頬を赤くさせたが、すぐに会話を再開させた。
「わ、我々が馬車に乗ってしまったら――きみたちはどうするんだっ?」
「……?……ああ、ご安心を。ジーンたちも出立させますから」
「は?」
――なんだか会話がかみ合っていない。
私は、パスクの身の心配をしているのだ!
だ、だが、ソレを正直に訊ねるのは、人の目もあり、恥ずかしいだけで……。
アリスが顔を紅潮させ、言いよどんでいるとパンが足元から叫んだ。
「パスクッ!アンタ、まさか……『開門』を?」
「ええ。折角ですから、この砦の兵だけでは――ねェ」
「くぅっ――その目はマジよね…………ふんっ!ジーン、手伝いなさいっ!」
パンは暫し、主であるパスクと視線を交錯させるとフイッと顔を背けて、鼻を鳴らすと黒騎士の名を呼んだ。
ジーンは眉をわずかに潜ませて、訊ねる。
「……なにをだ?」
「聞いてなかったのッ?『開門』よ――か、い、も、んっ!」
「かいもん?――っ!さ、最高位召喚系黒魔法か!?」
無表情だったジーンの顔色がサッと驚愕と畏怖へと変わった。