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『魔人』と『女聖騎士』
【ファンタジー 官能小説】

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第一話 ―― 魔人と魔獣と魔導騎士-23

その脅迫にパスクは悩むことなく従い、己の手に持った長い、グネグネとうねる杖をジーンへと渡した。

ジーンはアリスを極めていた腕を解くとパスクの杖を受け取る。

すでに、この体勢ではアリスが剣を抜くよりも首を刎ねるほうがはるかに速いと判断したのだ。

その様子を遠くから満足気に見つめたデュッセルは命じる。



「パスク・テュルグレ――ここまで来い。ゆっくりとな。ジーン・クルバもその女を連れて来い。万一のときには迷わず即刻、首を落とせ」



「はっ」



ジーンは了承の声を上げるとアリスの背中を押した。

ここで従わなかったところで現状は好転しないだろう、アリスは素直に歩きだした。

アリスは申し訳ない気持ちで一杯だった。



――自分が、パスクの弱点になってしまった。

私がいなければ、パスクも、姫様も助かったというのに――。



そんなふうに己を責めていると間もなく、デュッセルのすぐ前へと辿りついていた。

近くで見るとデュッセルは鋼の重鎧に大剣を背負った姿で、歴戦の猛者、といった風体である。

パスクはどうか知らないが、アリスなどでは百戦しても一本取れるかどうか、という実力差だろう――そんな覇気を老騎士は発していた。

国境の砦を任せられるだけはある。

その背後ではグエンがニヤニヤと軽薄な笑みを浮かべていた。



――さっきの会話から大体の事情は察せられた。

きっと、平民のパスクへの劣等感が貴族の彼をここまで貶めているのだ。

国が変わっても、考え方にはそうそう違いがないといういうことである。

パスクは話さなかったが、帝国に追放された後も相当の苦労をしたことだろう。



そう、アリスは場違いながらも思った。



「『魔人』よ。残念だ――貴様が部下である限り、俺の前には覇道が続いていたというのにな。間もなく帝都の高給武官にもなれただろう――俺も、おまえも、な?」



「いえいえ、身に余る官職は身を滅ぼすようですよ?私のように――」



パスクはすでに諦念を抱いたのか、にこやかに答える。

デュッセルは鼻で笑った。




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