第一話 ―― 魔人と魔獣と魔導騎士-21
――四百超の騎士を「この程度」?
しかし、パスクの台詞は的確だったようで、デュッセルは決して嘲笑ったりはしなかった。
真剣な眼差しでパスクをにらむ。
「四百四十二名の騎士と二十三名の魔導師では――貴様には及ばんか?」
「ええ、この距離ではまだまだ。私と騎士とでは相性が悪すぎますから――ねェッ!」
――ゴウゥゥンッ!
パスクは台詞の区切りと共にその長杖を振り、詠唱を破棄して呪文を発動した。
『呪文詠唱の破棄』は魔力の安定性が著しく低下し、不発に終わり、魔力が物理的衝撃となって術者へと帰ってくる可能性が高くなるため、熟練の魔導師でも使用には躊躇する、と以前、アリスは聞いたことがあった。
だが、パスクの魔法は発動に成功したようで、漆黒の稲妻が地面をデュッセルへと向かって走った。
目で追うには速すぎる魔法攻撃。
着弾の一瞬後にアリスは老騎士へと視線が追いついた。
土煙が晴れていく。
「…………くっ――くくくっ!なるほど、聞いたとおりだったな。魔人の魔法は黒魔法の極致。故に白魔法の多重結界に対しては乱反射してしまい無効化されるっ!」
「――ッ!それを、どこで?」
パスクは焦った表情で訊ねた。
さっきとは打って変わった弱気な『魔人』の態度にアリスは不安になった。
――よくは分からなかったが、パスクには弱点があったのだろう。
それを、あの将軍がついたのだ。
「俺が、教えたんだよ!隊長殿ォッ!」
しかし、パスクの問いに答えたのはデュッセルではなかった。
彼の背後に立つ灰色のローブを着た男だ。
年の頃はパスクやジーンと同じである。
そんな男へパスクは首を捻って訊ねた。