第一話 ―― 魔人と魔獣と魔導騎士-20
「これはこれは――デュッセル将軍、御自ら何用で?」
「ふんっ!ここまできて、惚けるか?」
老騎士――デュッセルが右手を上げるのを合図に広間へと騎士が流れ込んできた。
アリスの目算だが、その数、およそ四百――四百五十か。
パスクはその、騎士大隊二隊分の兵を見回すと困ったように頬を掻いた。
「……バレてましたか」
「ええ、バレバレも大バレよっ!だから言ったでしょ、穴だらけだってっ!杜撰なのよ、アンタの計画はッ!」
パスクの呟きにすぐ足元から怒声が返ってきた。
見るといつの間に姿を現したのか、パン――魔獣、パンクチュアリエームが白い尾をフリフリと振って、怒っていた。
――この使い魔、どこに行ったのかは気になっていたが……。もしかしたら、ずっと側にいたのかもしれない。
アリスは猫にしては大きすぎるその白い背中を見つめると、そう推察する。
パスクは素直に頭を下げた。
「すみません。これくらいしか思いつかなくて――」
「そ、それでどうするのだっ?」
アリスはあわてて、パスクへと訊ねた。
兵力差はおよそ十倍。
しかも、おそらくはパスクの率いていた『陸の波濤』魔導中隊もアチラ側だろう。
精鋭揃いの親衛隊も皆、浮き足立っている。
それでも、とっさにエレナ姫を中心に陣形を取るあたりはさすがだが――。
するとパスクは笑顔を崩さす、その笑みをデュッセルへと向けた。
「――将軍。貴方は、本気で、この程度の兵力で私に勝てるとお考えで?」
「なっ?」
アリスは目を剥いた。