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『魔人』と『女聖騎士』
【ファンタジー 官能小説】

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第一話 ―― 魔人と魔獣と魔導騎士-19

「…………。た、隊長もお元気そうでなによりですね」



始めに口を開いたのはエレナであった。

どうやら、いま、目にしたことはすべて無視して、話しを進めるようだ。

マデリーンも(よほど他人の視線に鈍感なのか)平然と膝を付き、挨拶する。



「これは、姫。私の不甲斐なさのあまり、苦労をお掛けしました」



「いいえ。それよりも、全員揃ったようですし――」



エレナの台詞の後半はパスクへと向けられたものだった。

視線を受けた『魔人』は頷いて、言葉を引き継いだ。



「はい。出発しましょう。コチラです」





パスクを先頭にジーン、アリス、エレナ……。

そして、最後尾にゲルハルトとパトリシアが立って二列で行進――移送の体を装っているのだ――した。

中庭を抜け、砦の外壁近くの広間へと到着した。

親衛隊は武器を隠していたこともあり、砦の者たちの注目を集めたが、問題なく目的地へと辿りつくことができた。

広間には二頭立ての大型馬車が五台、停められている。

馬の世話をしていた男――格好からして、平民だろう――にパスクが「移送の予定が早まった。もうここはいい」と告げると、その男はジロジロと親衛隊を眺めながら立ち去った。

完全にその男が視界から消えるとパスクはにこやかに言う。



「それでは、お乗りください。私どもは別に馬で移動しますので、それぞれの御車台に――」





「その必要はないぞ、魔人。貴様もその馬車で帝都に送られるのだからなっ!」





「っ!?」



その時、広間にしわがれた男の声が響き渡り、広間に面していた城門にガシャンッと鉄柵が降ろされた。

パスクたちが揃って声のしたほうをみると、そこには仰々しい鋼の甲冑に身を包んだ、白髪交じりの黒髪を生やす老年の男が立っていた。

一瞬、硬直したパスクだったが、すぐに柔和な笑みを浮かべ、訊ねる。




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