第一話 ―― 魔人と魔獣と魔導騎士-18
「あの、アリス……マデリーンの姿が見えないのですが……」
すると、パスクも続けて訊ねてくる。
「ああ、そう言えばゲルハルトもいませんね」
「はい?ああ……おかしいな。先ほどまで一緒に――」
アリスは親衛隊の面子を見回してみても、確かにマデリーンとゲルハルトの姿が見えない。
まさか、本当にマデリーンが切り捨ててしまったはずもなかろう。
そう首を捻ったその時、先ほどアリスたちが出てきた地下牢へと続く通路から、話題の男女が出てきた。
「――ふむ。甲冑だけは苦手だな。女物だと私には小さいし、男物だと胸が苦しい」
「はいっす!誰にも真似できない、完璧なプロポーションっす!」
「だが、しかし……これは、戦の中で甲冑を壊した私が悪いのか?」
「いえいえ、滅相もない!甲冑が悪いっす、全面的に」
「そうだろう、そうだろう。さて、どうしたものか――――む?どうした、各々方?そんな鳩が豆を喰らったような顔をして?」
「……………………」
四十人分の白い眼差しがその一組の男女に注がれる。
槍を担ぎ、不平を垂れるマデリーンにゲルハルトは揉み手をしながら逐一、相槌を打っているのだ。
その姿、正に――、
(暴君と追従する大臣……)
誰もがそう思った。
劇ならば、終盤で成敗される二人組みじゃあないか、と。
――もちろん、口には出せはしない。私も含めてだが……。
だから、場は静寂に支配された。
マデリーンは目をパチパチとさせて、一同を見回す。