第一話 ―― 魔人と魔獣と魔導騎士-17
「――剣を収めてください」
「っ?」
その空気を澄んだ声が切り裂いた。
四十人ほどの視線がアリスの背後――エレナ姫へと注がれる。
エレナはにっこりと微笑み、続けた。
「ここで争ってもなににもなりませんよ。確かに以前は剣を向けた相手でも、いまは味方――協力し合わなければなりません。それに、このパスクさんが私たちをあえて生かしたのも……皆さん、分かっておいででしょう?」
「………………」
「あの時、もし投降しなければ、今日という日がないのは事実です。そして、また、貴方方は剣を手にすることができました。ですから、その剣を向ける相手を見誤らないでくださいな」
「――はっ」
エレナの言葉に従い、親衛隊たちは臨戦態勢を解いた。
渋々、といった態度の者は一人もいない。
すると、エレナは大きく笑うと言った。
「ありがとう。私の剣たち……よく、無事で」
先ほど、アリスがしたように一斉に親衛隊は膝を付いた。
そんな主従の様子を静観していたパスクは、こちらも部下に命じる。
「ジーンたちも杖を納めましょう。残念ながら、私にはあのような話力はありませんがね――」
「…………」
「ぷっ――了解で〜す」
ジーンは無表情に、パトリシアは吹きだすと短杖を腰の吊るしに戻した。
その様子を見て、ようやく「ほぅ……」と安堵したアリス。
そんな彼女にエレナが途惑ったように訊ねた。