第3話『ふつうがいちばん』-5
「ごめん。俺はすっげーきもちーわ」
・・・こうして俺たちは、めでたくも普通に繋がることが出来たのだった。
せっせと腰を使っていたら、まぁの指がすっと伸びてきて、その先が俺の眉間に届く。
いつの間にかそこにシワがよっていたらしい。
「・・しゅーちゃん、あたしとこーゆーコトするのイヤ?」
はぁ〜。
おまえはなんだってこんなときに・・・
「さぁーな」
―― 今、このタイミングで、この体勢で、それ言うの反則や。
* * *
それから、後日 ――
「○○に行ってみたいの。しゅーちゃんセンパイ、案内してくださーい。」
なんて調子よく言われて、今日は最近になって出来た、電車で5駅の某巨大ショッピングモールにやって来ていた。
コイツにしてはかなり真っ当な提案にホッとしていた。そして、コイツにしてはまともな誘いに、俺は正直、油断していた。
だって、かなり普通っぽいデートみたいなかんじやんかっ!
映画でも観るか?
フードコートでなにか食うってのもいいかもしれない。
それからショッピング?
そして、・・やってしまうのか?! 試着室・・・っ!
とか、期待しちゃった読者の皆さん。
スミマセン(再び平謝り)。
残念ながらそーゆーイベント(ハプニング?)は発生することなく、・・わりと健全なデートでした。
そしてあっという間の帰り道。
まぁはあんなにしゃべったというのに、話題はまだまだ尽きることがなさそうだ・・。
「しゅーちゃん、あたしの好きなもの、なにか覚えてる?」
そう言われていちばんに思い出したのが、
「ポテトチップのコンソメパンチ」
だった。
「好きだけど違うよ〜」
「じゃ、マクドのイチゴシェーク」
「ちがうー」
「ああ、アレや! アンリなんちゃらのフィナンシェ?」
「もー、食べ物ばっかだよ・・。」
欲しい答えがもらえなかったのかムクれるまぁ。
かなり家の近くまで来た。
通いなれた道。そこは思い出の地、俺たちが通っていた小学校の付近に差し掛かったときだった・・。
「ここらへんもすっかり変わっちゃってるね・・・。」
終始、浮かれ気味だったまぁがここにきてやっとトーンダウンした。
「地震とかいろいろあったしなぁ・・。」
―― 変わったのはまぁだけではない。世の中すべてが日々刻々と変化しているのだ。
「なんかさびしいな。」
それはいつも見せたことのないような表情で、ぽつりと言った言葉だった。