青かった日々〜切欠〜-7
再来週の日曜、悟史は自分の母校でもある小学校へと足を向けていた。
グラウンドを見ると、子ども達はもう試合を始めている。デザインが変わっていなければ、黒のアンダーに白いユニフォームが健太のいるチームだろう。
「懐かしいな、おい」
ただ、投げることが好きだった。
野球が好きな父親に進められた入った部活だったが、直人や大と共に、どんどんと野球が好きになっていった。
試合に出れば両親は応援しに来てくれた。活躍すれば姉は素っ気なくも褒めてくれた。
夏美も、なんやかんやとよく試合を見に来てくれた。
もっと早い球を投げたくて、先輩に教えを請うこともあった。
素振りで潰れた豆を、ほんの少し誇りに思った。
中学に入ってからは、直人と大は違う運動を始めたが、互いの事を話し、冷やかし、励ますことが、かけがえのない日常だった。
なんで野球をやめたのか。きっかけは、なんだったか。
中学の夏か。卒業する時か。高校に入学した時かもしれない。
密かに身体を維持する程度のトレーニングは続けているが、二つ確実に言えることは、構堂館からの誘いを断り、今は野球をやらずにここにいるという事実。
もう一つは、
キン、という音で我に返る。見ると、セカンドベースでガッツポーズを決める健太の姿があった。
「さっすが名コーチ」
「だろ」
後ろからかけられた言葉に振り向かずに応える。どうやら、梓も来たらしい。
「明さんがね、草野球やってるんだけど」
「ああ」
「私も、偶にやらせてもらってるんだけど」
「ああ」
「さくら……悟史君もやらない?」
「そうだな」
もう一つ確実に言えること。
「やろうかな」
まだ、どうやら野球に対する熱は冷めてないらしい。