Last Magic-2
「ミナミ〜帰ろうや」
「あかん。まだ決めることあるんやから教室戻るで」
「え〜」
つまらなそうな顔をしながらも、教室に向かって私の一歩前を歩く。
パタン…パタン…と気だるそうに歩く規則正しい足音。
傷んでいるのか、アズマの毛先は随分茶色い。
細身なくせに背中は案外広い。
秋の乾いた風と共に、ほんのりいい匂いがする。
アズマ曰くワックスの香りらしい。
結構好きな匂い。
「あー、最後の学祭やな」
前を歩くアズマが急にそう呟いた。
妙に真面目な口調で言うから、思わず笑ってしまった。
「え、今の笑うとこ?」
「だって、急にそんなこと神妙に言うから…あはは」
「おセンチな気分やねん」
「おセンチ?」
「センチメンタル」
「なにそれ、似合わん」
私は足を速めて、アズマを追い越した。
廊下には傾いた夕陽でのびた二人の影。
私の方が前を歩いてるのに、アズマの影は私の影に追いついている。
放課後残って作業してる人達の声が中庭や教室から聞こえてくる。
日中よりは静かな校舎に響く、いいBGMだ。
「で、何決めるん?」
教室に戻ったアズマは私の前の席に座った。