君を守っていきたいです。-3
「おう健?」
「今日遊ばね?」
「おっ久々じゃんいいね〜」
「じゃあ今からそっち行く」
「おう」
それからの俺は、毎日女に声をかけ、朝まで遊んだ。気がつくと夏休みももうすぐ終わる…
―鈴香ちゃんと出会う前に戻っただけだ…
俺は明け方、自分の部屋のベッドの上でぼんやり考えていた。
学校も夏休みが終われば用がない。電車に乗る必要がないから…
―学校辞めて遊べばいい、前のように…何も考えず…
けど、なぜだか、あんなに楽しいと思ってた遊びもちっとも楽しいとは思えない…ましてナンパした女達に手を出す気にもならない…
ただ一人でいたくないだけで…俺は今日もきっと誰かに声をかけるだろう…
その通り、その夜も隆史と適当な女に声をかけていた。
「いいじゃん、じゃあカラオケだけ」
これは隆史のお決まりの台詞だ。
「でも〜」
俺は女達の前に座り込みバカばっか言ってた。
「通れないので道をあけてください」
頭の上から声がして、俺はその声にはっとした。
その声は、澄んだ迷いのない…そう鈴香ちゃんの声だった…
―………
「……わり……」
俺、とても顔を見る気になれず顔をふせたまま立ち上がり、道をあけた。
「…やっぱり、私もその程度だったんだ…」
―え?…
俺の横を通るとき、鈴香ちゃんがぼそりと言った。
その声はいつもと違う。くもったような沈んだような…
―…どういう…
「もしかして、吉高の人?」
鈴香ちゃんの後ろから来たあの男が俺に近づいてきた。
「…なんだよ」
「神崎が前に言ってたよ、“軽い遊びだよ、あの人にとって私は”って、やっぱそうなんだ」
―え?…俺が?遊び?
“軽い遊びだよ”
あの言葉にそんな続きがあったなんて…
―俺は本物の大バカヤローだ!!
俺、急いで鈴香ちゃんの後を追う。
「おいっ健!?ちょっ…待てよ…」
あきれてる女達も、俺を呼び止める隆史の声も、今はどうでもよかった。ただ鈴香ちゃんに言いたいだけ…俺の気持ちを…
「神崎鈴香!!」
俺は鈴香ちゃんの前に立ちふさがった。
「俺はバカだし、将来のことなんかなんも考えてねーし、あんたの景色を汚してるし、けど…けど、君を好きになりました!!俺は君を守っていきたいです」
―…言った…
言い終わって気がついた。俺の体は震えている…
「本当?」
「!!っはい」
「ナンパじゃ…」
「ないっ」
「遊びじゃ…」
「ないっ!!」
「…私も…私も高山健吾が好きです」
いつものあの澄んだ迷いのない声と、真っ赤になったかわいい笑顔に、俺は涙が出そうになって、顔をふせ手で覆った。
いや、涙はすでに俺の目から流れていた…
自分が情けなくて…でも嬉しくて…切なくて、愛しくて、けどやっぱり嬉しくて…