第2話『まりあの「ま」はアクマの「魔」』-2
向こうでは、名の知れた名門女子校なんかに通っていたというもんだら、どんだけ清く正しく美しく、蝶よ花よと育ってくれたのかと、近所の公立(が別に悪いというワケではないが)オンリーで雑草よろしく育ってしまったこの俺などは、たくましくも邪まな妄想を発揮させたり、期待したりしていたのだが・・、
これがぜんぜん清くも、正しくもなかったのだ。
(美しく・・は、まあ大丈夫だよな。コイツ、かわいくはなってるし・・・)
俺はあの一件から、まりあの「ま」は、もしかしなくてもアクマの「魔」だと確信していた。
感動的な四月の再会に、不覚にもときめいてしまった俺なのに。
高校生らしい清い交際が始まっちゃうのかと、淡い幻想を抱いていたというのに・・・
それがどーして、こーなった?!
コレはどーにも、突き抜けすぎっちゅーもんやで!!
いきなりはじまった、この『セフレ(ここはセフレでなくセレブがよかった!)関係』って!
「今日の掃除当番、代わってくれない?」ってなくらいの気軽さで、まぁは何気にとんでもないことを頼んできたのだった。
そんでついでに、恐れ多くもこのまりあさんは、
「アクマでこれはセフレなんだからね。しゅーちゃんもシタいときはいつだって、誰とだってシテいいんだよ」
とまで言ってくださっていた。
しかぁーしっ! ハッキリ言って、
「そんなことできるかーぁぁぁっ!!」
ああ、叫ぶさ!
チカラのかぎり声を大にして、河川敷で電車が鉄橋を渡ってるときになぁ!
当然、そんな度胸も、ましてなかなかそんなチャンスも簡単にそこらへんに転がっているワケもなく、
自ら新たな出会いをゲットしにいくワケもなく、
・・・まったくヘタレな俺である。
それは嬉しいような、悲しいような・・。
男の威厳なんて、風速300メートルのハリケーン『まりあ』に吹っ飛ばされてどこへやら・・・
こんなんぜんぜん等価交換やなーい!
って、いつの間にかまぁの下僕になってるんやないか俺?!
ああ、俺の子犬ような男ゴコロを弄びやがって!
しかし。しかしだな諸君・・。みっともなくも、恥を忍んで自己弁護させてもらうとだな、
「穴があれば突っ込んでみたーいっ!」
それがヤリたい盛りの男子の心情ってもんやろう?!
そして、新たなまぁの思い付きの決行日は、またまたつぎのつぎの週末ということになったのだが・・。
これぞ、アクマの呪いか?
『その日』が近づくににつれ、加速度的にひどくなるソワソワ感。
―― もー、これじゃあ完璧、俺、不審者デス。