オカシな関係1-4
「店に出てこい。…ん、今だよ今」
なに?この店は知ってるんだ。
でも、圭ちゃんはこの店を誰かに紹介してくれたことなんかない。筈で。
「いいから来いよ。 …うん」
それだけ言うと、圭ちゃんがケイタイから耳を離した。
「誰?」
「誰って…。まあ、くるからさ」
「なに、アレはあんたの知り合いなの?」
「ん?えーと?まあ、そう、かな?」
なんだか歯切れが悪い。
「じゃあ、あんたが教えたの?私があそこで昼、食べてるって」
「あー、それは僕だな。逢わせろってしつこいんで根負けした。あいつ、危険なヤツじゃないからさ。ま、居場所ぐらいいいかと。いやなら姉貴が河岸変えるだろうし。引導渡すなら姉貴からってのが筋かなと」
…しつこいのは分かる気がする。
危険そうじゃないのも分からなくもない。子犬系?
「なんだ、やっぱりそういう話なんじゃない。美佳ちゃん」
母さんが上目遣いで私を見る。
「し、知らないわよ。お菓子くれるだけなんだもん」
私は圭ちゃんの前のボトルを取り上げると、水割りを作って煽った。
「圭ちゃん、本当にオカシイ人じゃないでしょうね。母さん、美佳ちゃんが誰かとお付き合いしてくれるなら、嬉しいけど」
「オカシイ?まあ、変わったやつかもしれないけどね。ヤバイやつではないよ、その辺は全然心配しなくていい」
「おかしいわよ。おかしいでしょうよ!」
「じゃ、お菓子なんかいらない。来ないでくれって言えば?」
「それはー…。だってお菓子、美味しいんだもん…」
そう言われて、私は自分が思っていた以上に楽しみにしているらしいことに気が付いた。
知らない男のくれるお菓子。
毎日ゴミ箱にすてて、圭ちゃんの言うとおりの台詞を言って、ランチの場所も変えてしまえばいいことだ。
「だったら問題なしだ」
うーん、なんかすっきりしないな。