オカシな関係1-10
中にはお客が2名。
私で3人。フロアは狭くて3人で満員。
ガラスケースの中にはケーキが並んでいた。
普通サイズのケーキと二分して小さなお菓子。
3個入り、6個入り、12個入りの箱の表示。
先客の様子を見ていると。
箱を買って好きなお菓子を詰めるというシステムらしい。
母さんが買ってくるのは3個入りの箱。
ガラスケースの上には袋に詰められたいろんなクッキーがカゴを満たしていた。
2人の客は小さなお菓子を詰めてもらっていた。
どれも見たことがある。
そうしてできあがる箱は、まるで宝石箱のようで。
自分の順番がきて、私は6個入りの箱に詰めてもらうことにした。
それぞれに名前がある。
「ハートチョコと、チョコカクテルと… エッグノックと… ジュレボックスと… アールグレイと…」
白いキューブが目にとまる。
一番最初にくれたみかんの香りのする濃厚チーズケーキ。
そこに置いてある札には「MIKA」と記されていた。
「…ミカ…でお願いします」
みかんが入ってるから、そう言う名前になっているのかもしれない。
けど。
これはなんだろう。
視界がぼやける。
涼ちゃんの心を感じる。
息苦しい。喉がつまるような感じ。このまま嗚咽がこぼれてしまいそう。
「あれ?美佳ちゃん?」
店を出て数歩。涼ちゃんとはち合わせ。
私は店内で我慢してたから、その瞬間に不覚にもポロリと涙が落ちてしまった。
私の名前を冠した白いチーズケーキキューブ。
「美佳ちゃん?」
「あのチーズケーキ…」
言いかけて止めた。なんて言っていいのかわからない。
「なんで、なんで私なの?他にも女の子はいくらでもいるじゃない」
「美佳ちゃんじゃないと嫌だ」
涼ちゃんが私を抱き締める。店先なのに。
「ちょっとなにやってんのよ」
「美佳ちゃんじゃないと嫌だ。…あれは、美佳ちゃんの名前を付けたんだ。白くてふんわりしてて、でも深くてしっかりしてて、やさしい匂い。美佳ちゃんの印象を一番最初に込めたものなんだよ」
「ちょっと!店先だってば」
私は嬉しいんだか恥ずかしいんだかわからなくなった。
軽くパニックを起こしていた。
涼ちゃんの手が私のほほを包んだ。
私は涼ちゃんの瞳を見つめた。笑ってた。
逃げ出したいのに、動けなかった。
そして、ゆっくりと顔が近づきくちびるが触れた。