「タワー」-2
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地下鉄を降りて、改札口を抜け、階段を上って、地上に出る。
既に太陽が沈んだ空は、雲で陰っていた。零れる雨はどこか涙に似ているような気がした。アスファルトは濡れて黒さは際立たせ、しかし反面、鏡のようにぼくの姿を表面に映した。それは何かを見透かされているようだった。
冷えた空気が肌を刺す。吐息は白色を伴ってぼくの口から出てきて、何も言わずに宙に溶ける。
ぼくを包み込む世界が、今は冬なのだと、過剰なまでに主張しているような気がした。
分かっているよ。
言葉に出さずに自らの内側で返事をする。
答えはない。
返事はない。
始めから期待もしていない。
ぼくは拒絶されているのだから。
傘を広げ、ぼくは歩きだす。