犯人は……!-1
奇妙な偶然なのか、はたまた必然なのか……?
山荘に集った男女十三人を猛吹雪が襲う……。
俗世と切り離された空間で次々に起こる殺人という悲劇……ッ!
風呂場での溺死体。
玄関で頭部を斧で割られた死体。
部屋の梁からロープでつるされた縊死体。
山荘の外で見つかった凍死体。
部屋で毒殺された死体。
よくわからない格好でトイレで見つかった変死体。
短期間のうちに六人もの命が犠牲となった……。
しかも、どのいずれも犯行現場にメッセージが添えられており、見立て殺人だったのだ!
殺人鬼の影に怯える面々を尻目に、ある男が事件現場を調べていた。
風呂場で見つかった長い髪。
玄関で新聞紙を縛っていたビニール紐。
部屋の梁、垂れ下がったロープ。
凍死した被害者の首に巻かれたマフラーのほつれた毛糸。
肉料理を縛るためのタコ糸。
トイレになんかあったテグス。
これらが示すものは不可能を可能にする大胆不敵なトリック!!!
「……そうか、謎は全て解けた……!!」
今、名探偵の加納洋介が容疑者を前に犯人の名を宣言すべく、お決まりの台詞を放った!
「 犯 人 は こ の 中 に い る ! ! 」
まさか、といった表情になる生存者たち。
加納は一人を指差し言い放つ。
「小柴さんを浴槽に沈め殺害した「水底の断罪人」は、森川武、お前だ」
崩れ落ちる森川。
加納は続ける。
「そして、中島さんを斧で殺害した「赤く裂く華」は、井川瞬、お前だ」
歯軋りをして悔しがる井川。
さらに、続ける。
「それから、首吊り自殺に見せかけて山本さんを絞殺した「漂う復讐者」は、木島秦、お前だ」
舌打ちをして顔を背ける木島。
まだ、続ける。
「あと、竹川さんを吹雪の中に取り残し、凍死させた「雪山へ誘う者」は、高見梢、お前だ」
「あいつが、あいつが……」と繰り返し叫ぶ高見。
当然、続ける。
「ついでに、橋本さんを毒殺した「天国への料理人」は金川香、お前だ」
「仕方なかったのよ!」と言い放ちうつむく金川。
ここまできたのなら、最後の一人まで続ける。
「最後に、久我さんにナンカして殺した「不可解な殺人鬼」は……、た……ぶん、藤原……おやなおじゃないよね? ち……か……なお? って読むの? えと、お前だ」
納得いかない顔で「消去法?」とつぶやく藤原親直。
加納は巧妙なトリックを暴く!
みな口々に反論するが最後は加納の推理に跪くのだ!
……はたして、犯人を追い詰めたといえるのだろうか?
完