龍之介・弐-8
(思い出したくない・・・あれは、本当に自分でやってしまったのか?)
やめよう、さっさと体洗って、さっぱりしよう。
「お邪魔しまーす」
丁度浴槽から上がったその時、いきなりガラス戸が全開になった。
そこに立っていたのは、何も身に付けていない姉さんだったのだ。
「わっ?!何で入ってくるんだよ!俺が先だって言ったじゃないか!」
「ん?言わなかった?一緒に入ろうよって」
首を傾けてくすくす笑っている。
そして、目線が俺の股間に固定されたまま動かない。
「みっ見るなよ!もう!」
「へえー、今のが龍くんの普通の状態かぁ。ふふっ、そうなんだ。へえー」
ずるいよ、何で見るんだ。俺は・・・一瞬見ちゃったけど、姉さんの体は見ないつもりなのに。
「早く出てくれよ!すぐ洗うから待っててくれ」
「いいからいいから。お姉ちゃんと久しぶりのお風呂だよ、本当は嬉しいくせして」
「ちょ・・・・・・!!」
抱き付かれて、それ以上言葉が出なかった。あまりの肌の柔らかさに、呼吸の仕方を忘れてしまいそうだ。
胸に姉さんの膨らみが当たってる・・・
「・・・龍くんも男の子なんだね。お腹に硬いのが当たってるよ・・・」
「やめろ姉さん、怒るよ。こういう悪ふざけは良くないって。なぁ」
姉さんの細い腕が背中に蔦みたいに絡まり、離してくれそうに無い。
肌の柔らかさ、かかる息の熱さ、潤む瞳、総てが俺を狂わせていく−
「龍くんはぁ、エッチした事ある?」
「なっ?!なな何を言ってんだよ!?」
「答えてぇ。もうしちゃったの、それとも・・・まだなの」
こんな時でも姉さんに嘘はつきたくなかった。
俺は黙ったまま静かに首を横に振る。
「良かった。じゃあ私と一緒だね。すごく緊張してるね、胸がドキドキしてるよ」
まっすぐ見つめてくる姉さんの瞳は曇りが一切無くて、まるで鏡か水面みたいに、見る物を映している。
姉さんも緊張してるのか?悪いけど、自分の鼓動が大きすぎて姉さんの緊張が分からない。