龍之介・弐-2
「なんでそんなに離れて座るの。。いつもはもっと近いでしょ」
「そ、そう?変わらないと思うけどなぁ」
膝ひとつ分隙間を開けて座ったんだけど、これでも姉さんにとっては近くないらしい。
「ほら、こうやってさ」
「わっ!!」
いきなり膝をつけられ、思わず飛び上がりそうになった。
「大きな声出さないでよぉ。もぉ〜耳きーんってした〜」
「ご、ごめん。だっていきなり俺の太ももにくっつけるから」
姉さんは耳を押さえ、痛そうに片目を閉じて皺を寄せていた。
ちゃんと顔を見て話したいんだけど、鼻の辺りを見るのが精一杯だった。
すぐに笑顔に戻ったけど・・・姉さんは、俺に触れても何とも無いのか?
「大丈夫?汗かいてるよ」
「い、いいって!自分で拭くから」
首もとに巻いたピンクのタオルで俺の額を拭いてくれた。いいって言ったのに・・・
タオルは拭く前から既に湿っていて、何だかいい匂いがした。
「ちゃんとお風呂出る時体拭いてきたの?びしょびしょだけど」
「う、うん、一応」
「嘘だぁ、シャツに汗染みてるよ。拭いてあげるから捲って」
「・・・・・・何を??」
姉さんが何を言ったのかよく分からず、もう一回聞いてみる。
言葉は理解出来るけど何故それをしようとしてるのかは分かりそうに無い。
「汗かいたまま寝たら風邪引くよ。だから拭いてあげる。さあ、捲って」
「いいってば。姉さんどうしたの?な、何か変だよ・・・」
顔を観察してみたけど、表情に特徴は見られない。
何か変な悪戯をしそうには思えず、それが余計に俺を惑わせていく。
「見せてくれないんだ。中学までは普通に見せてたのに」
「そりゃあもう高校生だしさ、いつまでも子供じゃないし」
昔から姉さんはよく俺の体を見たがっていた。
最も変な意味じゃなくて、子供の悪ふざけの様な感じだったので、俺も何も考えず見せてた。
でも、もうそんな悪ふざけをする様な歳じゃないと思う。
本人に面と向かって言えないけど姉さんは最近おかしい。
普通の姉が高校生にもなって弟の体を見たがるものだろうか?
「いいでしょ龍くん。部活で鍛えてるんだし、自信のある人って体を見せたがるじゃない」
「その為にやってるんじゃないから。好きで部活してるだけさ」
「本当、男らしくなってきたよね。ついこないだまでちっちゃかったのに」
「うあっ!!」
今度は胸を触られて、思わず姉さんの手を押さえてしまった。
「痛いよ龍くん、離して。触っただけなのに変だよ」
「ごっ、ごめん」
触っただけなのに・・・か。
言われてみれば、別におかしくはないとも思う。
姉さんが体に触るのは一種のコミュニケーションみたいなものだし、俺も今まで特に疑問に感じた事は無かった。
だから、やっぱり俺がおかしいのかな。姉さんは全く意識してなくて、こっちが必要以上におかしいと思ってるのかもしれない。