幻蝶(その2)-1
…遠慮しなくていいわよ…わたしも、最近は忙しくて彼のところには行ってないの…早く新居を
見つけたいけど、多分、トモユキの転勤でニューヨークでの新婚生活になりそうなのよ…
トモユキのマンションで、いっしょに食事をしないかと亜沙子さんからボクに電話があったのは、
秋の風が心地よい夕方だった。コンビニのバイトを早めに切り上げ、僕はトモユキのマンション
を初めて訪れた。都心に近いマンションの窓から遠くに見える港のブリッジの灯りが、黄昏の中
で星のような光を瞬かせていた。
先に来ていたピンクのエプロン姿の亜沙子さんが、ひどく眩しすぎるほど初々しく見えた。
薄い唇と形のいい胸のふくらみが、ふとボクのフィギュアのアサちゃんを思いださせる。
亜沙子さんの手作りの料理とワインが、フローリングの床に置いた低いガラスのテーブルに並ぶ
と、ノースリーブの水色のワンピースを着た亜沙子さんはエプロンを脱ぎ、ボクの隣に座る。
亜沙子さんのつるりとした腋の下から、蜂蜜のような甘い香りがボクの鼻腔をかすめていく。
そして、横膝に脚をくずした亜沙子さんのスカートの中からは、瑞々しいほどの白い素足の太腿
が露わになる。それはアサちゃんと同じくらいすべすべとした艶やかさをもっていた。
「…少しずつ部屋を整理しているんだ…ほぼ間違いなく転勤なんだよ…ニューヨークの支店さ…
もちろん、亜沙子もいっしょに行くけどな…」
トモユキは、フォークでサラダの上の生ハムをつつきながら言う。
「…わたしって、ニューヨークって初めてなのよ…」
ふたりの新婚生活の話を聞かされながらも、ボクは亜沙子さんの太腿のあいだの翳りにそわそわ
と視線を注ぐ。むっちりとした素肌の腿が、乳白色の光沢を放っている。ボクはそのスカートの
中を想像する。
いる…きっといる…
亜沙子さんのスカートの中の花の蕾に、あの蝶がいるのだ…透明な薄いベールを重ねたような
羽根をゆっくり広げているに違いない。今すぐにでもボクは、亜沙子さんのスカートを剥ぎ取り
その蝶を捕らえたかった。ボクのペニスを微かな疼きが少しずつ襲ってくる。
夜も更けた頃、泊まっていけよ…というトモユキの言葉に、ボクはバイトのあとで疲れていたの
か、少し酔ったあと、リビングのソファでそのまま寝込んでしまった。
そして深夜に真っ暗なリビングで、ふと気がついたとき、隣の寝室の半開きになった扉の陰から
見えたふたりの裸体と囁き声…。
…となりでヤスオが寝ているんだぜ…いいじゃない…したいのよ…ヤスオくん、きっと熟睡して
いるから、大丈夫よ…
淡い飴色の灯りで照らされたベッドの上で、亜沙子さんの白い裸の背中がしなやかな線を描いて
いる。初めて見た亜沙子さんの裸だった。ボクの胸の鼓動がしだいに烈しくなる。
なめらかに伸びた背中の窪みが、悩ましくくびれた腰からしっとりとした白い双臀の細い切れ目
の翳りへと続く。
亜沙子さんは上半身を悩ましく捩るようにして、ベッドの上のトモユキの下半身に寄り添ってい
た。彼の股間に顔を埋め、トモユキのペニスを咥え、執拗にしゃぶっていたのだ。