生徒会へようこそ【MISSION4:幽霊の謎を解明せよ!】-6
「あったあった」
A4の紙に一学年時間割表という文字と、普段とは異なる全クラスの時間割の図。
テストや面談などで、今週と来週の時間割が少し変わるということらしい。週の始めに配られていた。
僕はそれをカバンにしまおうと、少し顔を上げた。
その時だった。
視界の片隅にそれはいた。
一度大きく心臓が鳴って、弾かれたように顔を窓の外に向ける。
目に映るそれに僕は釘付けになった。
早く細かく、心臓が脈打つ。
僕がそれに気付いたのとほぼ同時に、宝さんもそれに気付いた。
「…優…あれは…?」
宝さんが僕の目線の先を指差した。
そんなの、聞かれなくても見ただけで理解出来る。
あれは…人だ。
第4多目的室の窓際に人が立っているのだ。
僕は教室の窓に張り付く。
顔は遠くて見えないが、女子生徒の制服を着ている。
薄暗い室内に浮かぶ茶色いブレザー…。
紅が言っていたのはこの人のことか?
「おいっ!優!?」
「宝さんはそこにいて!」
宝さんの声が背後からしたと思ったら、無意識の内に僕は走り出していた。
階段を駆け下りるのが煩わしくて、半分ぐらいになると飛び降りた。
この高校の校舎を上空から見ると、『上』という字に似ている。
二画目が大廊下で、天辺が玄関だと考えるといいだろう。
ここから先は頭の中で想像してほしい。
玄関から真っ直ぐ下に下りてくると、左側に(一画目に当たる)細い廊下がある。その先は体育館や更衣室になっている。
更に真っ直ぐ進むと両側に階段があり右側が教室棟。一番上から1年生、2年生、3年生、職員室だ。こんなところにも年功序列が適用されている。
そして反対側は特別教室棟。理科室や図書室、本物の生徒会室に第1〜第3多目的室もここにある。
旧校舎は教室棟の向かい側、すなわち『上』という字の左側の開いている部分に、教室棟と平行して建っていて、細く古い渡り廊下で大廊下と繋がっていた。
僕が走ると廊下は軋んだ音を響かせる。
旧校舎には殆ど窓が無く、昼間でも電気を付けないと薄暗かった。
階段を一段抜かしで登り、第4多目的室まで急いだ。
頭に浮かんで来たのは先程の第4多目的室前での光景。
鍵は閉まっているんだ。オッさんが鍵をかけていたのをちゃんと見たし、実際に扉に手を掛けて動かないのも確認した。
僕自身がちゃんと確認してるんだ。
どうやって中に入ったんだ?それともまさか、本当に幽霊…?
そんな筈ない。
どうにかして中に入ったんだ。
でも、どうやって?鍵が掛かってるのに。
窓から?なわけ無いか。ここは4階なんだから。
それなら…僕の勘違いで鍵はかかって無かったとか…?
ペンキの剥げ掛けた白い扉を目の前にして立って、深呼吸して息を整えた。
ゆっくり扉に手を掛けてスライドさせようと力を加える。
「……」
開かない。中から鍵をかけているのかも。
もっとも、その仮説は元々鍵がかかってなかったっていう前提の話だけど。
だって、鍵がかかっていたとしたらこの扉をすり抜けるしか無いんだから。そんなこと、人間には出来ない。
僕はケータイを取り出して、宝さんに電話を掛けた。
彼女はまだ教室にいるはずだ。