龍之介・壱-10
「さよなら・・・龍くん」
「・・・さよなら、葵」
今度は振り返らずに言った。
駐車場に停めてあった原付を起動し、跨る。
少しずつ、思い出の場所から離れていく。振り切る様に加速し、道路に出た。
(・・・・・・雨、か)
ヘルメットのガラスに一滴、雨の滴がついた。
それが合図で次々に雨がガラスを叩いてくる。
それから急に激しさを増して、1分もしないうちに豪雨になっていった。
(姉さん・・・傘持ったかな)
雨はまだまだ止む気配が無い
いつか雨は止む。
そこから、どう進むか。どの道を選ぶのか、今の俺には分からなかった。
ただ、姉さんを想い続けた日々が終わった事
それだけは確かだった−
〜〜終わり(弐に続く)〜〜