君の瞳に恋してる・W-1
青い空。白い砂浜。紺碧の海。
「海だ〜〜〜っ!!」
海が腕を上げて身体を反らせながら叫んだ。
「先生!あたし海なんて小学校以来だよ!!」
「僕なんて10年ぶりですね」
二人とも更衣室で着替えを済ませ、海は傍らに大きな浮き輪を持っている。
華奢な身体をこの前買った水着で僅かだけ包んでいた。
水着とは本当に下着同然じゃないか?
形は下着とまったく一緒。生地が違うだけで水着と呼ばれる。
見方によってはここには下着だらけの女の集まりじゃないか。
「先生、行こ!!」
「あ、ハイ」
悶々とした思考を振り払う。
僕の手を引き、海が砂浜に一歩踏み出した。
「あぢっ!!」
砂浜は焼けるように熱く、海は踏み入れた足を一瞬で引き返した。
「えっ!?あ、海さん素足ですか?!」
「そうだよ!先生ビーサン履いてるし!」
周りの人達はみんなサンダルを履いている。
「太陽で熱せられるから素足じゃ熱いですよ!」
「え〜〜、そうなんだぁ…どうしよう…」
口に手を当て、半泣きの海。
見かねた加持は海の前に屈んだ。
「ほら、おいで?」
「えっ…!おんぶ?!でも恥ずかしいよ!!」
「足の裏火傷しちゃいますよ。ほら」
手を後ろにして催促する。
「…う、うん」
海は加持の肩に手を回し、背中に身体を預けた。
ゆっくりと立ち上がる。
どきっ
「先生、重くない?」
「ぜっ、全然!」
「まったまた〜。上手いね!先生!」
オヤジみたいな反応で、嬉しそうに足をバタバタさせる。
「レッツゴ〜!!」
海が前方を指差し運転手のように声をあげた。
彼女をおんぶする彼氏なんて周りには加持たち以外いなくて、周囲の人達がチラチラこちらを見ている。
海はもう恥ずかしさを忘れたようでちっとも気にならないようだ。
加持も気にならないわけではないが、それよりもっと気になる事があった。
素肌の背中に海の体温を感じる。
しっとりとした肌。
そして押し付けられた胸の感触。
いちいち反応する僕はオカシイだろうか?
何も気にしてない海を見て、なんだか自分を恥ずかしく思った。