君の瞳に恋してる・W-5
ランチは焼きそばとフランクフルトを食べて、パラソルの下で昼寝をしたり岸辺で水遊びをしながら過ごしていたらあっという間に夕暮れ時になった。
もう海水客はあらかた帰り、カップルが夕日を眺めている。
海と加持もシートの上で並んで夕日を見つめていた。
「先生、あたしこんな綺麗な夕日はじめてみたよ」
「僕もです」
淡い群青色から茜色に段々と色が変わり、見事なグラデーションを描いている。
燃えるような橙色の夕日が水平線に落ちていく。
肩にもたれる海を見ると、夕映えに瞳が濡れたように輝いている。
「海さんも綺麗です」
海は目をまん丸にして顔を上げてこちらを見た。
少し恥ずかしいけど笑いかけると、海は嬉しそうに目を細めた。
海の頬が赤く見えたのは夕日のせい?
――陽が落ちて暗くなった海岸沿いを車を走らせて帰宅する。
海はぼんやりと窓の外を眺めながら、ふとこちらに振り向いた。
「ねえ、先生」
「ハイ?」
「先生はラブホ入ったことある?」
「えぇっ?!」
急にとんでもないことを聞いてくると思ったら、海岸の道路沿いには飲食店やきらびやかな建物が点在している。ラブホテルだ。
「フフ…あるわけないよね。あたしもないんだ」
意外だ。でも海は同学年としか付き合ったことないと言っていた。
高校生同士の付き合いだとお金もかかるしホテルはあまり利用しないのかもしれない。
「そ、そうなんですか…」
なんとなく気詰まりでコホコホ無駄に咳払いする。
「ねえ、センセ?」
「ハイっ?!」
声が裏返ってしまった。
ハンドルを握る手に力が入る。
「えっち、したい」
どきん
海が手を伸ばし、太ももを撫でてくる。
ちらっと海の顔を見ると潤んで瞳でこちらを見つめていた。
「ホテル…行こ?」
そんな表情でそんなこと言われて断る理由がない――
『休憩3H、3900円〜』という弾幕がかかったライトアップされているホテルに決めて、パネルの部屋の写真の中から適当に選んで部屋に入った。
海は備え付けのアメニティやキングサイズくらいあるベッドに「スゴイスゴイ」を連発している。
なんとなく緊張して部屋の隅につっ立ていると、海がこちらを振り向いた。