コンビニ草紙 第二十伍話-1
第二十伍話 コンビニ草紙
今日も良く頑張ったなぁ。
私が大きく伸びをすると、バッグの中の携帯が震えた。
メールの受信が完了しました。
携帯を見ると1件のメールが届いている。
From:藤本草士
To :xxxxx@xxxxxx.xx.xx
Sub :おつかれさまです。
おつかれさまです。
今日はじいちゃんの退院いわいをするので、
お仕事おわったらぜひおこしください。
むかえにいきます。
----------------------
To :藤本草士
From :坂本涼子
Sub :Re:おつかれさまです。
わかりました。楽しみにしてます。
-----------------------
メールをすぐに返信する。
雪ノ下祭の次の週末、草士さんと二人で携帯を買いに行った。
草士さんは全く機会を使ったことが無いらしく、
通話が出来れば良いと言うので、一番操作が簡単な携帯電話を購入した。
初めのうちは電話だけだったが、次第にメールも出来るようになった。
まだ慣れていないのか、漢字の変換が上手くいかないらしく、
所々ひらがなのままで読みづらい。
それでも、一生懸命メールをしてくれるのが、とても嬉しい。
雪ノ下祭の後、私と草士さんはお付き合いを始めた。
あれから、ヒロタカはすっかり姿を見せなくなり、
藤本書店に来る担当も違う人に変わったらしい。
さやかと甲斐部長には彼氏が出来た事をいち早く報告した。
さやかはずるいと言って怒っていたが、それでも応援すると言い、
今度藤本書店に遊びに行くからと笑った。
甲斐部長は良いことだけど、仕事を疎かにしないようにと少し冗談交じりに
喜んでくれた。
仕事は相変わらず忙しいけど、彼に会う事で毎日が楽しく過ごせるようになった。
マンションの近くのコンビニが見えてくると、私は少し早足になった。
コンビニの自動ドアを通って左手にある雑誌コーナーを見る。
彼の姿は見当たらない。
ちょっと早く来すぎてしまったなと思い、デザートコーナーに行くと、
そこに真剣な顔でデザートを見ている彼の姿を見つけた。
私が隣に立っているのに、一向に気がつかない。
仕方が無いので指で方を軽くつつくと、彼はビックリして私を見た。
「あ、りょーこさん。お帰りなさい。」
「…ただいまです…。何、真剣に見てるの。」
草士さんは少し困った顔になる。
「いつもりょーこさんが買ってくるプリンと、新しく出たプリン、
どっちが良いか迷ってるんす。」
そう言うと、手を口元に置き、彼はうーんと唸った。
本当に真剣な目つきなので面白くてつい笑ってしまう。