コンビニ草紙 第二十伍話-2
「そんな事で迷ってたの。両方買えば良いんじゃないの。」
私は両方のプリンを掴んだ。
すると彼は目を大きく開いて私を見つめた。
「…そうか。そうすね。じゃあ2つ買いましょう。」
彼は髪をかきながら笑う。
レジでお会計を済ませてコンビニを出る。
ピピピピピッ
草士さんの携帯が鳴る。
彼が慌てて彼が着物の袂から携帯を出した。
なんだかそれがミスマッチすぎて、いつ見ても少し笑ってしまう。
「…はい、もしもし。あ、じいちゃん。はい、はい、
わかった。りょーこさんも一緒です。…はい、じゃあ今行きます。」
彼は携帯をパタンと閉じる。
「もうお華さんと洋七さん達が家に来てるらしいす。
だから早く戻って来いって。」
彼は携帯をまた袂に戻す。
携帯には雪ノ下祭りで買ったストラップがついている。
「りょーこさん、携帯って便利なんすね。」
彼が感心したように腕組をしながら言う。
でも、と首を少しかしげて続ける。
「でも、もし壊れてしまっても、私はりょーこさんをきっと見つけられます。」
彼は髪をかきながら私を見る。
「深夜にコンビニに行けば、りょーこさんに会えます。」
彼は目を細めて猫みたいに笑う。
私もつられて笑う。
彼はコンビニ袋を私の手からとり、その長い指で私の指をすくって手を繋いだ。
樟脳とお香の微かな匂いに混じって、小さく響く鈴の音が聞こえる。
寄り添って歩く二つの影が、長く伸びて一つになっていく。
私は手を繋いでいる反対側の手で、
バッグに入っている携帯電話のストラップを確かめるように触ってみた。
きっと、私も見つけられると思う。
私服が着物で、猫みたいで、とてつもなくアナログ人間。
だって、こんなに不思議で素敵な人は、
何処を探しても彼以外には見つからないのだから。
******おわり******