養護教諭 寒椿優衣の薔薇色の日々E-2
放課後…私は廊下の窓から野球の練習を見てたの。
あの子達ったら帽子も被らないでぇ。
でも…本当に楽しそうに練習してわ。
チョロも頑張ってるわねぇ。
見ているだけで微笑ましい気持ちになってくるわ。
「寒椿先生!」
私が微笑みながら野球部の練習を眺めていたら…廊下の向こうからハツラツとした声が聞えてきたの。
川村先生…ニッコニコしながら駆け寄って来たの。
「練習はいいんですか?川村先生」
私は笑いながら声をかけたわ。
「いやぁぁぁ…あいつらから兄弟になって来いって言われちゃいまして」
川村先生ったら照れながら頭をかいてるの。
可愛いわね…照れてる大人の男も。
「でも…寒椿先生は凄い人だなぁ…気を悪くしないで下さいね。
俺…最初はちょっと寒椿先生を軽蔑してたんですよ」
川村先生は私と並んで窓の外を見ながらしゃべり出したの。
「生徒をたぶらかしているから?」
私は気を悪くしていない証拠に悪戯っぽく笑って言ったの。
「でも違った…寒椿先生は母親の様に大きくて、恋人の様に優しい愛であいつらを包んでいんですね」
悪い気はしなけど…そこまで持ち上げられちゃうとコッ恥ずかしいわ。
「そんな…私はスケベなだけですよ」
謙遜?本音かな?
「そんな事ないですよ…寒椿先生は素晴らしい教師ですよ」
川村先生は相変わらず窓の外を見つめ微笑んでいるの。
「本当に素晴らしい教師は貴方よ…川村先生。
沖君は貴方の約束だからって…自分は手を出していませんでしたよ」
「あいつ…」
川村先生ったら涙で目を潤ませちゃって…ホント素敵な男性ね。
私はうっとりと川村先生の横顔を見つめたの。
「寒椿先生…」
川村先生が私の視線に気づき…こっちを向くと私の瞳を見つめてきたの。
やぁぁぁぁん…このままキス?!
ドラマみたいじゃないの。
「川村!」
窓の外から村野君の声?…私達は同時に窓の外に目をやったの。
「おい!川村!俺たちの先生に手を出すんじゃねぇ!」
沖君!?…やだ…みんな笑顔でこっち見てるじゃない。
「どういう事だよ…」
チョビ髭のイマッチだけオロオロしてるわ。
イマッチはキスもさせてあげた事ないから動揺しまくりみたい。
「お前ら!練習だ!練習!“キスにときめけ!明日にきらめけ!”」
川村先生…窓の外に向かって叫んだの。
そして…。
「ウォォォォォォォォ!」
沖君達の歓声が上がったわ。
川村先生の唇が私の唇に重なっているの。
私…びっくりして目を見開いちゃったの。
川村先生の優しい瞳…私を見つめて微笑んでいるの。
なんか…なんか…ポォォォッてしちゃうの。
こんなの…初めてのキス以来だわ。
長いキスが終わって…川村先生の唇が離れていったの。
やだ…私…年甲斐もなくときめいていたの。
キスにときめいていたの。
つづく