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コンビニ草紙
【理想の恋愛 恋愛小説】

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コンビニ草紙 第二十話-3

「お待たせしました。」

長次郎さんの後ろからおはなさんが顔を出しておじぎをした。

よく見るとこの前、草士さんと行った小料理屋の女将さんであった。

「あら。この前、草士さんと…。」

「そうです。すみません。わざわざ…。」

「あら、いいのよ。長次郎さんの頼みだもの。」

そう言うとお華さんは
持ってきた荷物を脇に寄せ、手際良く準備をし始めた。

「これからこの部屋は男子禁制ですよ。二人とも、お茶でも飲んで
ゆっくりしていてくださいな。」

「はいはい。じゃあお華さん、よろしく。」

長次郎さんはにこにこしながら襖を閉めた。

お華さんは私が着る着物を確認すると丈が合うかを確認し始めた。

「あら、ぴったりじゃない。良かったわ。サナちゃんも細くて背が割と高かったのよ。」

薄いピンク色の肌着のようなものを初めに着させられた。
お華さんはわたしの腰に紐をぐるぐる巻きながら話す。

「あの…さなさんってどなたなんですか。長次郎さんも言ってましたけど…。」

「サナちゃんはね、長次郎さんの娘よ。草士さんのお母さん。」

「え。お母さん…。」

「そう。私の幼馴染でね。小さい頃はよく遊んだのよ。」

お華さんは昔を思い出しているのか遠くの方を一瞬眺めた。
しかし手は休めることなく、さっさと着物を私に着せていく。

「あら、良く似合うわね。この萌黄色の桔梗の着物。サナちゃんのお気に入りでね。
よく着てたのよ。」

「…あの。そんな思い出のつまった着物、私なんかが着ても良いのでしょうか…。」

「長次郎さんが良いって言ってるんだから、良いのよ。
今までこんな事、初めてよ。私、びっくりしちゃった。
きっと坂本さん、気に入られたんじゃない。」

にこりとお華さんは微笑むと今度は帯にとりかかった。
帯はクリーム色のような淡い色でうっすらと露草のような模様が入っている。
シンプルだけど、美しい着物だった。
確か草士さんのお母さんはもう亡くなっている。
そんな故人の大切にしていた着物を勝手に着させてもらうなんて
気が引ける。
着物も一人で着れないような私に着られてサナさんも
心外かもしれないな、と思った。

「はい、出来た。」

お華さんは私の背中をポンと叩いた。

「なんだかサナちゃんが戻ってきたみたいね。」

私は何と言ったら良いかわからず、あいまいに微笑んだ。


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